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サイズダウンして深くなった『ビッグ・フィッシュ』

 再演と言っても、そのままじゃなかった。11月6日(水)マチネ、シアタークリエ。
 
ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』
脚本/ジョン・オーガスト 曲・作詞/アンドリュー・リッパ
翻訳/目黒条 訳詞/高橋亜子
演出/白井晃
出演 川平慈英 浦井健治 霧谷大夢 夢咲ねね 藤井隆 JKim 深水元基
   佐藤誠悟 東山光明 小林由佳 鈴木蘭々 ROLLY
 
 初演を観たのが去年、のような気がしてたんだけど2017年なんだって。時の経つのはあまりに早い。
 お話に変化はないので、ストーリーは以前のレビュー( →ここ)を読んでいただくとして、大きく変わった演出について。
 芝居が、深くなった!
 
 出演者は初演時と変わってないので、これは演出の変化によるもの。ハコが日生劇場からクリエに変わるのに合わせて、たくさんいたアンサンブルを切って、全てをメインの役者だけで演じる。その他大勢の役も、メインの役者たちが代わる代わる衣装を変えて出る。大劇場に合っていた賑やかしの場面(浦井くんがカウボーイ姿してた)などは無くなり、そのかわり家族の曲がいくつか増えた。
 それは大ボラ吹きの父親エドワード(川平慈英)のホラ話を楽しく見せることよりも、家族の(夫婦と親子の)気持ちを表現する方へシフトしたということで、これが大成功。初演よりずっと沁みて、ラストには不覚にも涙が・・・。
 パンフを買ってないので、どの曲が減りどの曲が増えたか、正確にはわからないのだけど、少なくとも、最初の方で母サンドラ(霧谷大夢)とウィル(浦井健治)で歌う歌は、初演ではなかったはず。父親を理解できず苛立つウィルに、サンドラが「おとうさんは一生懸命に生きてきたのよ、わかってあげて」と息子を諭す歌。これが出色の出来。
 初演の時も、霧谷大夢の演技はとてもよかったんだけど、今回曲が増えたことで、彼女の老若の演じ分けの素晴らしさが倍増。相手の素晴らしさに呼応するタイプの浦井健治の歌も、心のこもりかたが倍増。二人で歌うこの曲だけじゃなく、ウィルひとりの「Stranger」が沁みることといったら! 「Stranger」はコンサートなどでよく歌う曲なので何度も聴いてるんだけど、芝居の流れの中で役になりきって歌った時が格別だわ。
 ラスト近く、死に瀕して怯えるエドワードを抱き寄せて励ますサンドラの歌が、また素晴らしくて。この曲は初演でもあったはずなのに、今回の芝居の構成で夫婦や親子の関係がくっきりしたおかげで、このシーンの刺さりかたが全然違ったの。泣くよね(鬼の目にも涙ってやつ)。
 エドワードがいなくなったベッドに腰掛けて涙するウィルの姿も、初演の時とは比べ物にならないくらい、じーんときてしまって参った。
 
 演出は別に泣かせにきたわけじゃないと思う。夫婦と親子の間の気持ちをちゃんと描くほうへ舵を切ったら、いろんなシーンが有機的に働くようになって、見ている私たちもグッと入り込んだ、ってことよね。いろんなシーンが有機的に働くようにする、っていうのが演出の腕なので、再演は白井演出の勝利。マダムの中で、前回(KAATの新作ミュージカル)の失敗を完全に挽回してくれた感じだわ。

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コメント

こんにちは。遅まきながらビッグフィッシュを見ました。前回の時は正直なところ、
大好き、というところまで行かず、エドワードの「大風呂敷」に迷子になった
感じもあったのですが、今回はコンパクトになったせいか、流れがよく
ストーリーのつながりがよくみえた感じがしました。
クリエにぴったりなのでは。
浦井くんの役はこんなにうっとうしい(!)ものだったのですね。それだけにラストの
解放感が際立ちました!

あっぷるさま。
私も前回のままの再演だったら、見にいかなかったかも知れません。クリエ用にコンパクトに演出し直すときいて、行ってみたわけです。でもそれだけじゃなくて、父中心の物語を、夫婦と親子の物語に組み直した感じでした。
皆はどうなのかわからないけど、私は王様でもなく王子でもない等身大の青年役の浦井くんも好きです。

私も断然再演の方が良かったと思いました。お父さんのエピソードばかりだった気がした初演より
母と息子や息子夫婦の関係も丁寧に描いてくれて家族4人の話となり感情移入しやすかったです。夢咲さんなんて他の役を含めかなり出番増えてましたし、、
キャストさん達は大変だったと思うけど、いろんな扮装も楽しかったです。
浦井君のStranger、いろいろ聞く機会ありましたが劇中で役として歌っている時が
やはり一番ですね!

ホワイトさま。
浦井くんが芝居の流れの中で歌うのは、ホントに格別ですよね。
深い意味のある役を、これからもやってほしい。来年はどうなるのでしょうか?気を揉んでたら、もう師走…。

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