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一歩踏み込む三谷幸喜 『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』

 よくぞチケットが取れたものだ。9月21日(土)ソワレ、世田谷パブリックシアター。
 
『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』
作・演出/三谷幸喜  音楽・演奏/荻野清子
出演 柿澤勇人 佐藤二朗 広瀬アリス 八木亜希子
   横田栄司 
はいだしょうこ 迫田孝也
 
 三谷幸喜の最近の作品は、有名な役者ばかり揃うので、チケットを取るのが大変。それでマダムは長いこと敬遠していたの。
 ところが今回は、満を持して我が横田栄司が三谷作品に出演するというのだ。これを見逃してなんとする。
 チケット争奪戦に参加した甲斐があった。期待に違わぬ楽しさ。
 
 マダムは子供の頃から大好きでシャーロック・ホームズのシリーズを読んでた。ルパン(三世じゃないよ)好きの従姉妹と軽く論争になり、そのとき彼女が言った言葉が忘れられない。「ルパンは女好きでしょ?そこがいいのよ〜。シャーロック・ホームズって女っ気なくてつまんない
 マダムはびっくりしてしまって、年上の従姉妹をまじまじ見た。うまく言い返せなかったことを憶えている。
 今、思い返しても、従姉妹の発言は的を得ていたし、そんなつもりはなかっただろうけど、こちらの好みを言い当てていた。マダムは小さい頃から一貫して、女とチャラチャラしているキャラではなく、女が苦手(?)そうなキャラが好みだったのだ。だから、ルパン三世(これは三世)よりも五右衛門のファンだし、マカロニ刑事より山さんの方が好きだったのよ。
 なんの話かといえば、シャーロック・ホームズだった。三谷幸喜はホームズが大好きで、隅々までオマージュが感じられる。なによりもまず、シャーロック(柿澤勇人)がちゃんと、女が苦手な青年として描かれていたし。かといって、最近のホームズものにあるような、ホームズとワトソンの関係にホモセクシャルを匂わせるようなことはしない。
 お話には2本の軸がある。ひとつはシャーロックと兄マイクロフト(横田栄司)との関係。もうひとつがシャーロックとワトソン(佐藤二朗)との友情。
 
 これから観る方は、先に読んじゃダメよ。

 
 まだ探偵デビューする前の若きシャーロック。かなり年上のワトソンとなぜか同居を始め、事件の方が向こうから飛び込んでくる。シャーロックは嫌々ながらあっという間に謎を解き、華々しくデビューする・・・のかと思いきや、この事件はすべて、兄マイクロフトのお膳立てによるお芝居でした!という最初のどんでん返しまで、開演後3〜40分だったかしら?
 そこまでに、登場人物全員のキャラクターはすっかり浸透し、緩やかに楽しくお話に巻き込まれたところへ、思わぬ場所からマイクロフトが登場して、空気が一変する・・・そこが上手い! 横田栄司の面目躍如だし、そこで一斉に本性を現すヴァイオレット(広瀬アリス)もワトソンもいいし、演出も行き届いてる。
 シャーロックも騙されたままではなくて、担がれたことを見破って、兄と対決することになる。あくまで弟を支配下に置きたいマイクロフトと、その干渉から逃れて独り立ちを目指すシャーロックの葛藤。それが本筋になって、最後までお話を引っ張る。シャーロックの独立を賭けて、兄弟がトランプで対決し、シャーロックが勝つ。支配することをやめて、兄が去っていくところで話は一度、クライマックスを迎える。
 最近の三谷作品は、このあたりで終わることが多かった(と感じ、それが不満だったマダム)んだけど、今回はもうひとつどんでん返しがあって、マダムは凄く満足した。
 一連のマイクロフトが仕掛けたお芝居の中に、ワトソンがこっそり潜ませたもうひとつのお芝居。若い医者と浮気して自分を裏切っているミセス・ワトソン(八木亜希子)に対し、ワトソンは復讐を計画していた。自分が毒を飲んで死ぬことで、毒を盛った罪を妻に着せようと企んだのだけれど、シャーロックは全て見破り、阻止してみせる。「死なせるわけにはいかないんだよ、大事な友達だから」というシャーロックのセリフで、物語は本当のクライマックスを迎える。
 クライマックスの二段構え。これによって、若きシャーロックは、みんなの知ってるシャーロック・ホームズとなる。そして、ワトソンとも、みんなの知ってる信頼関係が結ばれる。
 本当によく練られた本で、計算された演出で、役者全員が行き届いた演技で・・・楽しかった!
 
 実はマダムが観た回は、ハプニングがあった。
 小道具のトランプに間違いがあって、途中からやり直したの。でも、内心は知らないけど、役者たちはほぼ全員がベテランで海千山千(褒めてるのよ)だから、全く慌てるところなく、ミセスワトソンとヴァイオレットがレストレード警部(迫田孝也)をイジって時間を稼ぎ、ハドソン夫人(はいだしょうこ)が小道具を取ってきて、何気なく再スタートした。お話の流れに決定的な溝を作ることなく、楽しげに(?)過ぎていって、マダムは逆に得した気分だった。お詫びしに、カーテンコールで三谷幸喜が出てきてくれたしね。
 
 今作は、ここ何年かの三谷作品の中でもピカイチの出来ではないかしら? カッキーが、繊細でちょっと神経質でコンプレックスを抱えてて、でもプライドも高いというややこしいシャーロックをよく表現していたし、佐藤二朗のワトソンも温かくて味わい深くて、とても良かったの。テレビで佐藤二朗が自分自身を売り物にさせられているのを見てきたから、このワトソンにホッとした。彼に、アドリブじゃなく、ちゃんと演技をさせた三谷幸喜、えらい。
 これは再演があるといいな。なかなか再演させない三谷幸喜ではあるけれど。

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コメント

最後のどんでん返し!本当にびっくりしました。
映像なら(チケットもう一枚取って)巻き戻して見直したい〜〜
横田さんの存在感、さすがでした。
出てきた瞬間、舞台がピリッとしましたねー。ロッカーが開いたとにも
わかってはいましたが拍手喝采でした。

ホワイトさま。
楽しい芝居でしたね。本気で作ってるから、あれだけ笑えるんですね〜。アドリブに頼ってないものね。
横田さん、最高!

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