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『アイヌ オセロ』を観る

 ここのところ中央線利用率が高くなってる。6月9日(土)ソワレ、国際基督教大学ディッフェンドルファー記念館、東棟オーディトリアム。

シェイクスピア・カンパニー『アイヌ オセロ』
作/ウィリアム・シェイクスピア 脚本/下館和巳、渡邉欣嗣
共同演出/秋辺デボ、下館和巳
出演 犾守勇 石田愛 香田志麻 加藤㮈紀 中野莉嘉 ササキけんじ
   水戸貴文 及川寛江 藤井優 増田寛子 千葉絵里奈
 

 シェイクスピア・カンパニーという劇団については以前から、なんとなく聞いてはいたのね。シェイクスピア作品を東北に置き換え、台詞も東北弁で演じる劇団だということで、活動の本拠地は仙台らしい、と。
 ひょんなことから仙台在住の役者さんと知り合いになって、今回の東京公演に行ってみることにしたの。
 東北弁、わかるかなぁと少し不安だったんだけど、それは全く問題なかった。むしろ、東北弁が生き生きと伝わってきて、楽しかった。
 
 『オセロー』の舞台を幕末の仙台藩に移し替え。蝦夷地(北海道)をロシアの侵略から守るために仙台藩は、アイヌの男を将軍としてとりたてている。それがオセロ(オセロー)で、妻デズマ(デズデモーナ)は仙台藩の武士の娘。ヴェニスにとってのムーア人を、仙台藩にとってのアイヌ民族に置き換えていて、その辺なかなか上手いよね。
 オセロははっきりそれとわかるアイヌの民族衣装を着ていて、デズマも最初のシーンでアイヌの衣装を着せられ、マタンプシというアイヌの刺繍入りの鉢巻を額に巻かれてオセロの妻となる。そのマタンプシが例の誤解の刺繍入りハンカチの代わりとなる。道具立てはバッチリ。
 
 役者さんたちは女性が多いので、仙台藩の武士は殆ど女性が男役をしていて。台詞は声量も滑舌も良くて、こちらにちゃんと届くのだけれど、やっぱり女性が男役をやるにあたっては何か演出上の工夫が必要なのではないかしらね。男っぽく演じることで手一杯になってしまう。そのせいもあって、仙台藩側のリアリティが相対的に下がってしまってる。役の立場は説明できているのだけれど(たとえばデズデモーナの父親だな、ってことはわかる)、その人らしさまで演技で出せてはいない(娘を愛しているのか、所有物として、取られたから怒ってるのか、取った男がアイヌだから怒っているのか、どう気持ちを収めたのか、がわからない)。
 演出にアイヌの秋辺デボを迎えているので、アイヌ側の描写は凄くしっかりしている。アイヌの踊りや衣装は見応えがあるのだけれど、そのアイヌを差別しながらうまく利用している仙台藩側の描写が薄い。具体的な描写が足りないの。アイヌに対する差別感情の描写もね。それがとても残念。だって、設定の置き換えがこんなにうまくいっているのだから、もっと驚くような面白いものができたと思うし、差別というものの正体にも迫れたと思う。
 たとえば。デズデモーナが仙台藩士の娘ならば、最初の姿はいかにもな日本髪や着物姿がよかったんじゃないかな。それを脱いで、アイヌの衣装に着替えれば、デズデモーナの並々ならぬ決意がそれだけでわかるでしょう? エミリアの衣装もよくわからなかった。彼女はどっち側の人なんだろう?
 イヤーゴーが内地人とアイヌの混血、という設定は台詞に出てきて、面白い発想だとは思ったのだけれど、それは、仙台藩側の差別感情を描き切れてこそ生きる設定なので、不発だった。
 
 役者さんたちはみな、台詞については凄く訓練していて、東北弁の台詞もよくわかったの。一方で、他の人の台詞に対する反応が弱い。自分の台詞がない時もその役で居られるかどうかがとても大切なことで、芝居を面白くするのはそこだから。
 オセローは威厳があって、強いが不器用な武人らしかった。自信がある時と、嫉妬で狂っている弱さとの、落差がもっとほしかったな。
  イヤーゴーはなかなか面白かった。東北弁で不満やら妬みやら悪口やらをタラタラと聞かされると、ホント可笑しくて。イヤーゴーって魅力的な役だって再認識した。

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