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草彅剛の挑戦『バリーターク』

 観たい芝居はなぜこうも、上演時期がかぶるのかしら(その2)。5月25日(金)ソワレ、シアタートラム。

『バリーターク』
作/エンダ・ウォルシュ 演出/白井晃
出演 草彅剛 松尾諭 小林勝也 ほか

 長年SMAPのファンだった(といってもいいと思う。コンサートとか行ったことないけど)マダムでも、彼らの芝居はほとんど観たことがない。チケット、手に入らないんだもん。唯一観られたのは稲垣吾郎主演のこまつ座だった。その他は、エントリーすらできなかったこともあって、ここ数年は最初っから諦め気味だったの。
 だから今回はもう、奇跡。奇跡の最前列・・・嗚呼。
 そして、マダムのPCでは、ちゃんと彅の字も出る。みんな、見えてる?
 
 これは草彅剛のための芝居だったのだと思うけど、難しいところを狙ったなあ、白井晃。
 セットは、台所も風呂も完備してるやや広めの古びたワンルーム。壁には鳩時計があったり、絵が飾ってあったり、すごく高いところにドレッサーがくっついていたりする。細部が、遊機械全自動シアター時代の白井演出を思い出させるような作り。
 でもこの部屋にはドアがない。
 
 どこから入ってきたのかわからない二人の男A(草彅剛)と男B(松尾諭)が、この部屋の住人。彼らはけたたましい目覚しの音でベッドから飛び起き、ご機嫌で飛び跳ねながら朝ごはんのシリアルを食べ、懐かしの80年代の音楽をバックに踊り狂い、よくわからない会話をし、バッタリと眠り、再び目覚しの音で飛び起きる。一見楽しそうな二人を見ていても、ちっとも楽しくならないのは、いつまでも二人が何者なのかが見えてこないから。
 繰り返しが苦しくなる頃、突然向かい側の壁がゆっくりと倒れ、外界が顔を出す。草に覆われた外界から、不気味な老人(小林勝也)が現れて、詩的な言葉を吐きながら「もう時間だよ」と告げる。「明日、どちらか一人がこの家を出なさい。出て12歩あるいたところで、俺がこの銃で撃つ。そういう決まりだ」と。AとBは既知のこととして、その言葉を受け入れ、Bが年上なのでBが行くことになるの。
 でもその時がやってきて、もう一度壁が倒れると、Aが出て行く。心を決めていたのはAの方で、Bも当然のようにそれを受け入れる。Aが撃たれるところは見えない。壁が閉まり、 Bはこのまま一人で暮らしていくのか?それはそれで地獄のようだ・・・と思えるんだけど。
 すると、ただの壁だった部分に、小さく穴が開いて光が差し、そこから幼い女の子がひっそりと入ってくる。Bはあっけにとられて女の子を見つめる。女の子が部屋の中に進むと穴はぴったりと塞がり、また窓もドアもない部屋で、Bは女の子と暮らしていかなければならない。いつまで続くのかわからない時の営みを、耐えなければならない・・・。
 
 というようなお話だった。観てない人は、これを読んで、わかるかしら?わからないよね。だって、観てもよくわからなかったから。
 ある意味で、人生そのものを表わしている、とも言える。私たちはどこから来たのか知らないし、いつまで人生というこの部屋にいられるのかも知らないし、或る日突然終わりを迎えるのかもしれない。一緒に生きる仲間も、選べないこともある。運命が与えた条件を受け入れて生きるしかない。
 そういうことが描きたいのかも、とは思った。でもこれは観終わって随分考えた後に理解したことなの。観ている最中は、訳がわからなかった。
 で、たぶん、訳がわからなくてもいいのよね、瞬間瞬間を興味深く観続けられたら、それでいいのよ。
 そういう観点から見たら、草彅剛は、とてもよかったの。とにかく体のキレが良くて動きがシャープ。見ているだけでワクワクする。意味が深まっていかない会話でも、彼が喋ればみんな、聞く。そういう信頼関係みたいなものを、観客との間で構築できちゃう。ライブで鍛えた力だね。
 でも残念ながら松尾諭が弱くて。彼の容貌はこの役にぴったりだったんだけど、動きに面白みがないし、台詞は真面目なだけ。この意味不明な流れに、乗っていけてないの。もう少し不条理な世界へ跳ぶことができていたなら。
 死神的な老人役の小林勝也は、詩的な台詞を美しく聞かせてくれたんだけど、『ビッグ・フェラー』の時(あれ、なん年前だっけ?)に比べたら、怖さが小ちゃくなっちゃったな・・・。
 
 いろいろ言っちゃったけど、舞台役者としての草彅剛は期待通りだった。また観られるといいな、彼の舞台。

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コメント

もう随分と経っちゃいましたが。
私が観たのはKAATで、だから初日が開けて間がない頃だったんですよね。
なので、出演者2人ともまだまだ余裕がなかった。

でも、回数を重ねても、あまり変わらなかったってことですね。
松尾君がどこかで化けるかな〜と、ちょっと期待したんだけれど。

私が観た時も、草彅君(私のも出るんだけど、ちゃんと見えるかな)は、まだなんて言うか・・・長年培ったカリスマ性というかアイドル性というか、舞台を引っ張る力があるんだけれど、松尾君がそれを受け止めきれてなかったです。この役は、むしろ草彅君を上回る芝居巧者じゃないと成り立たないんじゃないかと思いました。松尾君はテレビで注目され始めた人だけど、やっぱり舞台経験はほとんど無いし・・・ちょっと荷が重かったね。

ぷらむさま。
ロズギル見た時も思ったんですけど、こういう不条理劇(といってもいいですよね)を演れる役者さんって、普通言う「演技の上手さ」とはまだ別の才能がいるような気がします。松尾くんはきっとすごく真面目な人なんですよ。まずはリアルな芝居に出てみた方が良かったのかもしれませんね。

マダム、おはようございます!
へぇ、松尾くんがいい感じに引っ張っていくのかな?と思ってました。草彅(出ました!前はなかったですよね!?)くんはドラマの演技が好きだったのでいつか観てみたいと思ってましたが、まず取れないだろうと傍観…行ってみればよかった!!

きむらさま。
彅の字、みんな順調に出ています!
松尾くん、舞台はあんまり出てない人だから、ライブという点では草彅くんに圧倒的に負けてます。そこはもう、当然の結果というか。
チケットに関しては、ほんとよく取れたな、と感心しています。運が良かったとしか言えませんです。

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