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“いろいろな人“を登場させ得た『Take Me Out 2018』

 劇場はなかなか素敵なのだけど、急な階段が怖い。あと数年すると、マダムは降りられなくなるのではないかしら? 3月31日(土)マチネ、DDD青山クロスシアター。

『Take Me Out 2018』
作/リチャード・グリーンバーグ 翻訳/小川絵梨子
演出/藤田俊太郎
出演 玉置玲央 栗原類 浜中文一 味方良介 小柳心
   陳内将 Spi 章平 吉田健悟 竪山隼太 田中茂弘

 初演を観た人たちが皆褒めていたので、再演を待っていたの。とても面白かったー。
 野球チームの話らしいと聞いていて、野球についてなら人並み以上の知識はあるし、それ以上何の予習もしていかなかった。観終わってわかったのは、これは特にその知識も必要なかったね。
 というのも、野球のシーンは殆どなくて、ロッカールームの人間関係の話であったから。
 大リーグのチーム、エンパイアーズのスター選手ダレン(章平)は、父が白人、母が黒人だったけれど、裕福な家庭に育ち、今は人気選手となっている。これまでに一度も差別を受けることなく生きてきた(と語り手のキッピー(味方良介)が言う)彼は、ある日自分がゲイであることを公表したため、差別と偏見が彼の周りに渦巻き、チームの成績も下降気味。チーム内に不協和音が起き始める。
 チームを立て直すため、補強として押さえのピッチャー、シェーン(栗原類)が加入し、チームは再び上昇するのだけれど、シェーンのゲイに対する差別発言が再びチームの雰囲気をどん底に陥れる。投げやりになったダレンは、若くして引退を考える。でも彼の会計士メイソン(玉置玲央)がダレンをとめる。それは商売上のアドバイスにも見えたのだけれど、ある大事件が起きて、ダレンは自分にはメイソンが必要だと気づく・・・。
 というような物語。

 男の役者ばかり11人。イケメンの男の子が多いので、客席もそのファンらしき若い女の子がいっぱい。イケメンばかり集まると皆同じ顔に見えて物語が平板になるきらいがある昨今だけど、今回は違ったので、おおっ、と思ったよ。
 ダレンを演じた章平をはじめとして、皆、違う顔、違う体型、違う人種、を表現できてた。ダレンの少し浅黒い肌、シェーンのヒョロッとした体つきとロングヘア、メイソンの少し貧弱にさえ見える小柄さと赤毛っぽい髪、キッピーの短い北欧的金髪、他チームのスター選手デイビー(Spi)のハーフの顔立ちを生かしたwaspっぽさ、顔も体も表情を抑えた日本人選手カワバタ(竪山隼太)・・・といったように見た目の違いがちゃんと出ていて。その上に、言葉だけに頼らない演技全体で、一人一人の個性を表現できていたの。その辺りの演出がとてもきめ細かくて、的確。
 人種の問題や、ゲイの人たちが受ける差別の問題。むき出しの差別意識を見せるシェーンには過酷な子供時代が背景にあったことも描かれる。幼い頃に両親を亡くし(父が母を銃殺後、自殺する、という無理心中)その現場にいた記憶にさいなまれながら、ずっと居場所もなく教育も受けずに大人になってしまった、その結果が、短絡的な差別主義者なの。演じる栗原類が素晴らしかった。こんな狭量で短絡的で教育のない人物を演じるのは、精神的な負担が大きいだろうなぁと思うのよ。なのに、パターンの「悪役」や「かわいそうな人」に逃げずに、シェーンを造形しきっていたことに感心した。冷徹な演出も偉い。
 ダレンを演じた章平が、すごく素敵だった。大人の男っぽさ、色っぽさがちゃんとダレンに宿っていて。だから彼がプレイするシーンがないにもかかわらず、人望を集めたスター選手だってことを、見る側もすんなり信じられたし。
 そしてなんといってもメイソン(玉置玲央)の造形だよね。小柄で貧弱で、少し遠慮がちでありながら、気持ちがついあふれて饒舌になってしまうゲイの会計士。最初、観客はダレンと一緒になって「誰だよ、こいつ」と思うのだけれど、最後には愛すべき人として受け入れてしまうのよ。
 
 Take Me Out のあとには当然、 to the Ball Game と続くのだけど、題名の 「Take Me Out 」はダレンの心の言葉なのかな。俺をここから連れ出してくれ、という。あるいは未来へ連れてってくれ、という・・・。 
 面白かったなあと思いながらの帰り道、つらつら考えたのは、どんな問題もタブー視して逃げちゃダメだ、っとことね。芝居も、物語も、人生もね。

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コメント

4/3に観てきました。初演も観ています。前作は観客にメジャーリーグの野球場味わって貰おうと演出意図があったのですが、その辺りはバッサリ、人間関係のぶつかり合いがメインになってます。多分少エピソードを足している気がします。
メイソン役の玉置君は身体能力高いのに、それを使わずに起用とは、と思いました。

叡さま。
なるほど、初演とはだいぶ変えたのですね?
玉置さん、私はたぶん初めて見たと思うのですが、あの演技の良さは身体の柔らかさからも来ていると感じました。身体能力の高さは、普通の演技にも活かされるってことですね。

マダムー!
玉置玲央君は、マダムが感想を放棄した『秘密の花園』で地主の息子?だった人ですよ。水の中でバッシャンバッシャン楽しそうだった人、穴から飛び出したり飛び込んだり。
私は、ここ数年、彼のことはけっこう高く評価しています。

ぷらむさま。
ええっー!同じ人?それはそれは・・・気がつきませんでした。
「柿喰う客」の人なんですってね。彼は今回の発見のひとつです。

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