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言葉がなくてもシェイクスピア ロイヤルバレエ『冬物語』

 週末に何を観るか迷ったすえに、東宝シネマズ日本橋に行ってきた。

ロイヤルバレエ『冬物語』(2018年2月28日収録)
振付/クリストファー・ウィールドン 音楽/ジョビー・タルボット
美術/ボブ・クローリー 指揮/トム・セリグマン
出演 ローレン・カスバートソン(ハーマイオニー) 平野亮一(リオンティーズ)
   サラ・ラム(パーディタ) ワディム・ムンタギロフ(フロリゼル)
   マシュー・ポール(ポリクシニーズ) ラウラ・モレーラ(ポーリーナ)ほか

 

 ひさびさに演技の稲妻を浴びた。
 しかも、なまの舞台ではなくシアターライブ、つまり映像からなのだから、まさかの『ビリー・エリオット』体験の再来!なのでは? ヤバいわ〜これは。『ビリー・エリオット』の時は、感極まったあまり結局ロンドンまでなまを見に行ってしまったのだから。まずいぞ・・・。
 
 マダムは殆どバレエを知らない。舞台を観たのは2回しかなく、1度目は記憶にないくらい子供の時だし、憶えているのはトロカデロモンテカルロバレエ団なのよ。なので全くの素人である。
 テレビのドキュメンタリーで、今ロイヤルバレエ団のプリンシパル(主役級)に2人の日本人がいると紹介されていたのね。そこで平野亮一の練習風景などをチラリと見て、何か機会があればこの人の踊りを見てみたいなあと、ちょっと思ってはいたの。
 それでもこの演目でなかったら、見に行かなかっただろう。シェイクスピアの『冬物語』!

 こりゃね、シェイクスピア好き、の中でも役者の人に見せたいっ。
 というのも、台詞がなくても、リオンティーズを表現できるってところを、見た方がいいと思うの・・・(あたりまえだけど、真似しろってことではなくてね)。
 平野亮一のリオンティーズは本当に素晴らしかった。演技の稲妻が出まくり。もちろん、バレエであるから、普通のシェイクスピア劇とは全然違う。これを見るまでは、台詞のないシェイクスピアってなんやねん、くらいに思っていたマダム、完全に倒れた〜。
 リオンティーズは「何の根拠もなく」、愛してやまなかったはずの王妃の浮気を疑い、「何の根拠もなく」疑いは確信となり、嫉妬と怒りの塊となって、まわり中をなぎ倒し、妃と王子を死に追いやってしまうのだけど、シェイクスピアは台詞の嵐で表現している。それをロイヤルバレエの演出は、古典的なダンス(とマダムが思う)とは違う振付で、表現する。疑いのダンス、嫉妬のダンス、怒り心頭のダンス。高い高い技術に裏打ちされた豊かな表現で、平野亮一はリオンティーズの激しい振れ幅をぐんぐん押し広げていく。そして映像ならではの醍醐味は、顔の演技をしっかり見られること。嫉妬で顔が歪むほどの表情や、怒りで人は本当に狂うんだってことを目の演技で見せていて、1幕はひたすら息を呑んで、画面を見つめてたの。
 
 2幕はリオンティーズから捨てられた赤ん坊パーディタが、羊飼いに育てられ、美しい娘となって恋をする様子が描かれるのだけど、1幕の狂おしい暗さを吹き飛ばすような、明るくて美しい群舞。素直に楽しい。(でも、ドラマティックなところはないの。)
 そして3幕。自分の狂気のせいで妃も子供もすべて失って廃人のようになったリオンティーズのもとに、救いがもたらされる終幕。パーディタとの再会、仲違いしたかつての親友との和解。そして最後の最後に、死んだはずのハーマイオニーの彫像が生きたハーマイオニーとなってリオンティーズの前に現われた時の感動といったら!それまでのリオンティーズとハーマイオニーの演技の素晴らしさで、完全に二人がその役の人にしか見えなくなっていて、20年の時を経て許し許される姿に、心の涙腺が決壊よ・・・。
 
 というわけで平野亮一の演技の稲妻に倒れ切ったマダムだった。
 海外のシェイクスピア上演ものを観るたび、言葉の壁は大きいなあと思ってきたマダムだったけれど、思わぬ伏兵現る!なんと、シェイクスピアなのに言葉を使わない演技があったのだったわ。溜息。

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コメント

マダムがロイヤルバレエの感想をUPしてくださって本当に嬉しいです!シェイクスピアがお好きなので、いつかロイヤルバレエもご覧になるかな~とこの日を待っていました!
今回の平野亮一さん本当に素晴らしかったですね。代役として入られたそうですが、世界中に実力を見せつける絶好の機会となったと思います。こんな踊る俳優のような日本人いたんだ!!と、私もマダムと同じく衝撃を受けた一人です(笑)
この冬物語はバレエ作品の中でも群を抜いて演劇的でドラマチックなバレエだと思います。他にも「マノン」や「アナスタシア」などが、私的には稲妻が走りました!
今後もマダムがバレエ鑑賞を続けてくださる事を心から祈っています。。

これは気になります!
シェークスピアなのに、セリフがない。
そのセリフの分が、バレエの踊りに変わるわけですね。
うーん…すごい…想像が…もうひとつできないので
余計に気になります。

さやとんさま。
平野亮一というダンサーに「お?」と思ってすぐに、ストーリーをよく知る『冬物語』にタイミングよく出会えたのがとても良かったです。
隣で見ていたバレエファンのおば様は「1幕が退屈だ」「2幕が素敵なのよ」と言ってましたので、シェイクスピアおたくの私とは惹かれるところが違うのかな、と思ったりしましたが。
でも、平野さんのリオンティーズは紛れもない「本物」であると私は確信しましたし、自分がいかに本物に飢えていたのかを気付かされましたよ〜。
 
ちかさま。
私もね、観る前はほとんど想像できなかったんです。バレエの知識もないですし。
でも素人の私のバカの壁をやすやすと乗り越えるほどの「本物」の技術力と表現力でした。言葉がないので、言葉の壁はないんです。身体の表現力のみ、なんです。
関西では上映、ないんでしょうか?百聞は一見に如かずなんですけどねえ〜。

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