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深いオーソドックス 加藤健一事務所『ドレッサー』

 加藤健一の芝居といえば、本多劇場ね。3月4日(日)マチネ。

加藤健一事務所公演『ドレッサー』
作/ロナルド・ハーウッド 訳/松岡和子
演出/鵜山仁
出演 加藤健一 加納幸和 西山水木 石橋徹郎 金子之男
   岡﨑加奈 一柳みる

 有名な作品で、見た憶えはないのに話を知っている『ドレッサー』。
 長年シェイクスピア俳優として一座を率いてきた座長と、それを支えてきた付き人(ドレッサー)の舞台裏の物語。30年前に付き人ノーマン役を加藤健一が演ったとき、座長の役は三國連太郎だったのだそう。うう。なぜ、マダムは観ていないの?いったい何をしていたのかしら?
 どんな物語も時代背景や、人物に影を落とす社会的背景がとても大切なのだけれど、この『ドレッサー』も例外ではない。第二次世界大戦下のイギリスが舞台となっているの。
 なので、若く健康な男たちは皆、戦争に行っているわけだから一座には、老俳優(男女)や足の悪い役者や新人の女の子しかいない。そのメンバーでやりくりしながら毎日のように、今日はオセロー、明日はリア王というようにシェイクスピアを演じて旅をする。年老いた座長の疲れはピークに達してる・・・というところから始まるわけなの。
 台詞を忘れ、奇行が目立ち、心身ともに疲れきっている座長(加藤健一)を、なだめすかし、ワガママを聞き、衣装やかつらをつけさせ、なんとか舞台に立たせる付き人ノーマン(加納幸和)は、座長が思い出せない台詞も全て憶えていて、付き人としては超プロフェッショナル。でも誰かの代わりに口上を言うことになって舞台に立つと、身も世もなくアガってしまう。根が、表舞台には立てない人間なの。
 
 奇をてらわぬオーソドックスな演出で、この古典的な作品にはとてもふさわしいと思った。とにかく加藤健一と加納幸和の手練れの台詞術を味わうためにあるような芝居だから。
 とりわけ、座長が脈絡なく色々なシェイクスピア作品の台詞を言うところなどは、加藤健一のなめらかかつ響きの良い台詞を堪能できてうっとり。一方加納幸和のノーマンは、長年女形で鍛えてきた「人を立てる」演技や「人を甲斐甲斐しく世話する」演技が本当に自然で、このキャスティングの妙に溜息がでるくらい。
 
 ラストは「リア王」をなんとか演じきって眠りながら逝く座長と、最後まで感謝の言葉をもらえなかった付き人との別れ。どんなにヨレヨレでも座長が太陽で、その光に照らされなければ輝けない月のような存在のノーマン。光を失って、恨みつらみと哀しさと憤りがないまぜとなったノーマンの演技がずっと、尾をひくの。
 
 戦時中ということで灯りが暗めの楽屋のセットだったんだけど、ずっと暗めなのが観客としてはちょっと辛かったかな。
 
 観終わった後は、三國連太郎と若き加藤健一(といっても30代後半)だったらどんなだったか、を思い浮かべてみた。三國連太郎の座長は、もっとわがままさが手に負えない感じだったのではないかしら・・・? 加藤健一の座長は、愛すべきわがままさだったね。

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コメント

カトケンを観なくて久しいのですが、今回は行くぞーと思ったら、夜公演がほとんどなくて、働くおばちゃんに優しくない公演日程。なんやかんやで日にちが合わず、断念しました。

ドレッサーは、橋爪×大泉洋バージョンを観ました。

橋爪版は、演出が三谷さんだったし、メイン2人も滑稽味が身上の人たちですから、むしろ、どこまで滑稽味を消してシリアスを狙うか?という感じの舞台でした。
そして、もちろん、舞台上のドタバタが真骨頂。
何しろ、三谷さんはこの芝居に誘発されて「ショー・マスト・ゴー・オン」を書いたくらいの人ですし。

そして、さんざん積み重ねて来た果てに、ラストの空虚感が印象的でした。
ノーマンが空っぽなの。
人間、あそこまで空っぽになれるんだ〜と思うくらいの空っぽさでした。
今回は、一癖も二癖もある加納さんだから、また違ったテイストだったでしょうね。

ぷらむさま。
カトケンの座長がわがままだけど可愛いんですよね。もっと孤高な座長なら、ラストが空虚になるのかもしれないけど、空虚にはならず。
尽くしたのに、報われなかった・・・けど好きだったからしょうがないわ・・・みたいな感じ?でしたね。

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