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いのうえひでのり版『近松心中物語』

 満員の客席。1月20日(土)マチネ、新国立劇場中劇場。

シス・カンパニー公演『近松心中物語』
作/秋元松代 演出/いのうえひでのり
出演 堤真一 宮沢りえ 池田成志 小池栄子
   市川猿弥 立石凉子 小野武彦 銀粉蝶 ほか

 二組の男女が心中していく物語。近松が書いたいくつかの心中物をミックスして作家が作り上げたストーリー。
 忠兵衛(堤真一)と梅川(宮沢りえ)は美男美女の正統派悲恋で、与兵衛(池田成志)とお亀(小池栄子)はダメ男とそれに溺れてるダメ女のバカップル。二組の心中話が同時進行するところが、この芝居のよくできたところ。かたっぽだけだと、単調で厚みのない話になっちゃうもんね。
 蜷川御大の出世作であり、20年以上に渡って役者を替え演出も手を加えて上演が続いてきた有名作品。マダムは1981年に帝劇で観てる。
 
 今回の客席は、平均年齢若干高めだけど老若男女ほどよく、キャストの華やかさとセットの豪華さ、彩りの鮮やかさもあり、よりわかりやすく演出したいのうえひでのりの腕前冴え渡ってて、楽しく観たの。高く組み上げた木組みのセットを盆に載せて素早く動かし、場面転換の時間も江戸の町の賑わいを作り出してて、大掛かりなセットを使わせたらいのうえ演出は本領発揮なのね。ホントにエンターテインメントだ。
 四人の主要キャストは役にぴったり。忠兵衛の実直さ、梅川の美しさと希望のなさ、与兵衛のいい加減さ、お亀の愛嬌ある嫉妬深さがそれぞれ滲み出てて、堪能したの。特に堤真一が素晴らしいよ〜。
 正統派悲恋組の方が演じるのは難しい。だって、二人の人物設定が描かれてるシーンは少ないし、どんどん話が進むから、形ばっかりになりかねない。宮沢りえには美しさという説得力が始めからあるけれど、堤真一の方は、すごく考えて、練りに練って忠兵衛を作り上げたと思う。実直さだけが取り柄で生きてきた男が、女に惚れ込み女に実直に向き合ったら、実生活のほうが崩壊してしまう。その道筋を、ブレずに演じていて、忠兵衛がどういう人か、納得したの(蜷川版の平幹二朗は美しかったけど、生きている人という感じがしなかった)。
 
 そう。とても楽しくて、満足したんだけれど、驚いたことに、観ているうちにどんどん1981年の記憶が呼び起こされてしまって。マダムも若かったし、すごいインパクトだったのね。一度しか観てなくて、その後中継映像観たわけでもないのに、これほど呼び起こされるとは。寝た子が起きてしまった。比べずにはいられない。
 でも、昔の話は聞きたくないよ、という人もいると思うので、ここでは比較の話はしないでおく。別記事を書くね。
 
 この日は、お亀と与兵衛の死ぬ死なないで揉めてるシーンで、与兵衛の鬘が取れるというハプニングがあった。すぐ付け直して、芝居は途切れず続行したし、そうでなくても可笑しくて客席は笑ってばかりいるシーンだったので、さらに笑いを取るための仕掛けだったんじゃないか(そんなわけないけど)と思えるほど自然に、大笑いして過ぎていった。感心したのは、カーテンコールで、このことについて謝る、というか触れてみせた、そのやりかた。
 カーテンコール自体はごく真面目にやって、一番最後に主要キャストが背中を向けて、舞台奥へとゆっくり歩き去っていく。そのとき、宮沢りえが隣にいる池田成志に向かって、手で「鬘が取れちゃったでしょ?」みたいな仕草をしたの。で、池田成志はちょっと頭をかいて「ごめん」的な仕草で応えた。客席は拍手しつつ大笑い。言葉で変に「すみませんでした」とか言われるよりずっと、気持ちがいい収まり方だったの。百戦錬磨の宮沢りえ、流石だ。
 
 というわけで、蜷川版『近松心中物語』の話へと続く。

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