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風間杜夫の飽くなき挑戦『ピース』

 チェーホフの翌日はこれ!9月3日(日)マチネ、俳優座劇場。

風間杜夫ひとり芝居 『ピース』
作・演出/水谷龍二

 前回のひとり芝居の上演の時、さすがにもう、これで打ち止めかしら?と考えたマダムは、ファン歴35年以上とかのくせに、風間杜夫のことをちゃんとわかってなかった。きっとこの人は、足腰立たなくなるまでやるつもりなのだ。
 これまでのひとり芝居はずっと本多劇場だったのに、今回は俳優座劇場。久々に行ったら、ホントに古くなっててね・・・1階にバーがあるお洒落な劇場で、ロンドンの古式ゆかしい劇場にも似た作り。なのに、古くなると、味が出るというよりただ古びてしまうのは、どうしてなのかしら。ロンドンのようにはいかないの。
 でも、芝居が始まると、そんなことはすぐに忘れた。
 

 今度の主人公は、葬儀屋の男。その設定だけで、最初マダムはひとりでウケていたの。だって、マダムの住む辺りでは、風間杜夫はとある葬祭ホールのCMに出ていて、「顔」だから。
 だけどお話が進むにつれ、マダムは唸った。風間杜夫はCMに出ながら、その仕事を観察して「使える!」と思って設定に選んだに違いないわ。前回の風呂屋の番台にいるお爺さんの役よりも、何倍も、社会にコミットできる設定なの。
 だって、死っていうものは、その人の人生を浮き彫りにするものね。
 
 東京の下町で小さな葬儀社を営む男、武藤万作。後を継ぐ修行中の娘を連れて、葬儀を取りしきっている。今にもマイクを持って歌いだしかねない感じ(実際歌うシーンもある)で、笑わせてくれるけれど、既に「ひとりなのに共演者がいる」感が立ち込めてる。相談に来る客や、ハラハラしながら父の仕事を手伝っているらしい娘などが、同じ舞台上にいるような気がしてくる。ひとり芝居にコツ、のようなものがあるとすれば、もうすっかり掴んでいるの。役者も、そして観客の側も。
 場面転換の間に2年が過ぎ、妻と娘は事故で死んでいて、万作はすっかりやる気を失って、飲み屋に入り浸る。気遣うバイトの店員は、片言の日本語を話すシリア人の若者で、万作は少しずつ立ち直っていく。そして、その若者が死んで、身寄りのない彼の葬儀を引き受け、ラストには自分の生前葬をやるところまで、話は進んでいく。
 
 今の社会に対する疑問や意見などが、ストレートに盛り込まれていて、かなり未消化なところがあるものの、とにかく疑問を隠さずにまな板に上げようという態度なのね。そこは前回より、一歩踏み込んでる。いつものようにこれから2年くらいかけて、地方公演も打っていくのだろうし、その間にもっとこなれたものになっていきそう。
 なんかね、今をちゃんと捉えた本を、やりたいんだな、と思った。
 役者は役が来るのを待つ身な訳だけど、風間杜夫をもってしても、待ってるだけじゃ満足できないの。だから、ひとり芝居、やるんだね。
 先に足腰立たなくならないよう、マダムも精進する。

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コメント

兵庫公演観ました。一人芝居はイッセーさん以来でした。ストーリーは人生の寂しさを含みながらも単純明解で笑いがあるし、年を重ねたら誰もが共感できる内容で気楽に楽しめました。数日前にミュージカルのレ・ミゼラブルを観たばかりでしたが、演出が盛り込みすぎでゴチャゴチャしすぎて疲れていたので、この一人芝居がもつ余白というか、観客の想像力に委ねてくれるのびしろが何とも心地よかったです。芝居が好きでたまらないというのが伝わってきました。

さやとんさま。
観客の想像力に委ねてくれるのびしろ、って素晴らしい表現ですね!そうなんです。観客を信じてる感じ、とか、観客と作り出す感じがあって、そこは風間さんの長い長いキャリアがものをいっているんですね。

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