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歌の楽しさ ミュージカル『ビューティフル』

 夏の舞台、目白押し。8月19日(土)マチネ、帝国劇場。

ミュージカル『ビューティフル』
脚本/ダグラス・マクグラス
音楽・詞/ジェリー・ゴフィン&キャロル・キング
     バリー・マン&シンシア・ワイル
演出/マーク・ブルーニ
訳詞/湯川れい子
出演 平原綾香 中川晃教 伊礼彼方 ソニン 
   武田真治 剣幸  ほか

 メチャクチャ楽しかったー。

 キャロル・キングのアルバム「Tapestry(つづれおり)」のレコードを擦り切れるほど聴いたのは、今からもう40年以上も前で、久しく聴いていなかった。で、このミュージカルを観ることになって、予習しとこうとCD(なぜかちゃんと持っている!)をかけると、メロディの全てを身体が憶えているのだった。若いときに沁み込んだものは忘れないのね。
 でも芝居が始まったら、マダムにとってのキャロル・キングはTapestryの歌声そのものであって、彼女の生涯については何も知らなかったんだ、ってわかったよ。
 
 この芝居が描くのは、16歳から28歳までのキャロル。ソングライターとしてデビューし、紆余曲折あって、28歳で「Tapestry」の大ヒットにより、世界で初めての女性シンガーソングライターとなるまで、の物語。
 キャロル(平原綾香)は、16歳にして作曲を志しているんだけど、母ジニー(剣幸)は、音楽の教師になって安定した暮らしをしてほしいと願っている。ジニーは離婚して一人でキャロルを育ててきた経験から、安定が一番、と思っているのね。そんな母を押し切って、キャロルは音楽プロデューサーのドニー(武田真治)に曲を売りこみ、作曲家としてデビューする。そして、同じカレッジのジェリー・ゴフィンと出会い、恋に落ちて、彼の詞に曲をつけるようになるの。キャロルは妊娠し、二人は結婚する。
 このあたりまでの話はあれよあれよと言う間に進むんだけれど、キャロルの何をも疑わない無防備さ、子供のままの天真爛漫さと、作曲の突出した才能のアンバランスさが際立つ。才能はすごいのに、色々と人生不器用な感じのところに、平原綾香のまだ器用ではないが誠実な演技がはまっていて、とても上手い滑り出し。
 そしてドニーの構える作曲スタジオにキャロルとジェリーは部屋をもらって、次々曲を作るんだけど、すぐ隣の部屋には作曲家のバリー(中川晃教)と作詞家のシンシア(ソニン。好演!)がいて、二組は競い合うように曲作りに励む。ここら辺から、一気に楽しさ全開になる。彼らの曲ができあがると、舞台にはその曲を歌った歌手たち、シュレルズとかドリフターズ(全員集合!の人たちではない)とかリトル・エヴァとかが現れて、ショーアップして歌う。そのシーンがまあ、楽しいこと!アンサンブルの人たち、凄いわ!(激しい特訓があったみたいね。ブロードウェイから歌と踊り、振り付けの鬼コーチが派遣されてたらしい。)
 そのショーアップされた楽しさの一方で、キャロルの実人生には辛いことや切ないことが起きていき、そこにも彼女の曲がうまく当てはめられて、使われるのだけど、そこは平原綾香の歌唱力が炸裂する。
 「Will You Love Me Tomorrow?」はシュレルズが歌うときは、歌詞は切なくてもポップスとして楽しげにアレンジされているので、軽いの。でも、ジェリーの心が離れていくのを感じているキャロルが歌うときは、「もう愛はないのね?」という悲痛な気持ちがこもっていて、胸にせまる。
 圧巻は、ジェリーと別れ、ひとり西海岸へいく決心をしたキャロルが、バリーやシンシア、ドニーに別れを告げ、「You've got a friend」を歌い上げるシーン。途中からバリーたちも加わって、別れを惜しむんだけど。
 もともといい曲で、マダムはTapestryの中で一番好きな曲だし、普通に聞いてもジーンときちゃうんだけれども、こんなシーンで歌われた日にゃあ、涙腺決壊ですよ〜。
 
 すごく楽しかった。それはこのミュージカルが歌の魅力に満ちていて、聞いているだけでも楽しい時間だったってこともあるし。いい曲の宝庫のような時代の物語だから。
 個人的には、キャロル・キングの曲をCDで聴くよりも、歌ってもらって聴く方が何倍も幸せで、いろんな人が歌うと曲の良さがさらに感じられたの。こんなにいい曲だったんだなぁ、ってしみじみ。
 客席は、これまで帝劇で見たことがないくらいの高い男性率だったし、リタイア世代の人たちでいっぱいだった。これだけの、普段劇場に来ない人たちが、キャロル・キングの人生を描いたミュージカルならば、と集まったのね。内容次第で、こういう層を劇場へ連れてこられるってことね。
 そして、これもブロードウェイのミュージカルを「まんま」やる、という手法だったわけだけど、『ビリー・エリオット』のときのような抵抗感はなくて。
 あちらはお国柄を色濃く反映したテーマだったけれど、『ビューティフル』に関して言えば、ひとりの女性の若いときの葛藤がテーマなので、手を加えなくてもすんなり伝わってきたの。
 作品ごとに、日本人が上演する難しさの、種類が違うということかな。
 

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芝居レビュー 」カテゴリの記事

コメント

都民半額観賞会を利用して夫婦で「ビューティフル」見てきました。楽しかったわ。

見ようと思ったのはマダムに誘っていただいた「ジャージーボーイズ」がすごく良かったから。中川晃教くんにもまた会いたかったし。キャロル・キングのことなんてな~んにも知らないまま行ったけれど、十分楽しめました。

平原綾香、素晴らしかった。ソニンも好きだわ。歌ったり踊ったりする子たちも、本当に楽しそうで、いい気分で過ごせました。

たぶん、「ジャージーボーイズ」を見ていなかったら、これを見ようとは思わなかったはず。マダムに感謝します。

サワキさま。
よかったですね〜、ご夫婦で楽しめたみたいで。
ジャージーボーイズのときは、アッキー(中川晃教くん)に目が釘付けでしたが、今回みたいな脇に回っても、彼はちゃんと役になりきれるんです。ソロナンバーがほとんどなくて残念でしたけど、役者として、彼、よかったでしょう?
ジャージーボーイズとビューティフルは、ジュークボックスミュージカルと言って、既成の曲を使うミュージカル。さらに伝記である、というところも同じで、作りがとても似ています。偶然だけど、そういうところも、楽しめた要素だったのかも。
私も、ミュージカルは苦手でしたけど、このジャンルは好きだわ、と思いました。

トニ―賞でチラッとこの作品を見たので期待半分、恐さ半分で劇場に行きましたが、始まった瞬間、吹き飛んで楽しみました。
ラジオにかじりついてた中学生の頃に覚えた歌詞って残っているのですよね。歌詞の意味はなんとなくしか解ってなかったけど。
ステキな日本語訳と人生経験で色々感じました。ステキな作品でした。

かおりママさま。
日本語訳に怖さを感じながら行ったのですが、内容に沿った訳になっていましたよね。
そして、恋の歌が多いんだけれど、恋愛を超えたもっと大きな愛を感じる作品でした!
YouTubeでアレサ・フランクリンのナチュラルウーマンを聴いてみましたら、すごい曲でした。キャロル・キングって作曲家としてとんでもない人だったんですねー。

Viola-san
こんにちは。
私、このミュージカルを3回観たので💛(笑われるけど)、奈々キャロルとあーやキャロル両方を観ました。

★水樹奈々
・ティーンエージャーから恋愛や仕事を経てシンガーソングライターとして自立するまでを丁寧に演じる。大学生の時は声も若く、さすが声優。 
・客層:圧倒的に、アニメファンが多い。若者と、なぜかおじさん。
・ノリがいいけど、おとなしめ。

★平原綾香
・ストーリーや演技よりも、歌へのひたむきさに目が(耳が)行ってしまう。
・客層:シニア率高し。ご夫婦が多かったかな。
・にぎやかなノリ。

水樹奈々、平原綾香ともに、それぞれのキャロル・キング像を創り出していたと思います。どちらも歌はうまいから、ダブルキャストはこうでなくちゃ、と思いました。

ベースとなるオリジナルのミュージカルが素晴らしいのはもちろんですが、キャロル以外のキャスト、特にアンサンブルと呼ばれる方たちがうまくて、見ごたえのある舞台でした。

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