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野田作品、そのまま歌舞伎になる

 建て替えられた後、初めて行った! 8月12日(土)18:30〜、歌舞伎座。

八月納涼歌舞伎第三部『野田版 桜の森の満開の下』
坂口安吾作品集より
野田秀樹/作・演出
出演 中村勘九郎 市川染五郎 中村七之助 中村梅枝 中村巳之助
   片岡亀蔵 坂東彌十郎 中村扇雀 ほか

 古い歌舞伎座が取り壊される前になんとしても、と子供を連れて行ったのが、2009年の『野田版鼠小僧』だったの。
 そして、新装なった歌舞伎座にまだ行ったことがなかったマダムが、初めて行くことになったのが『桜の森の満開の下』。もう歌舞伎座に戻ることはないのかと思っていた野田秀樹が演出するというから、マダムも一緒に戻ってきたのよ。
 知り合いに「どんな席でも良いので」とチケットをお願いしておいたら、なあんと桟敷席が来てしまって!もう、こんなお大尽気分は最初で最後だろうと、ウキウキしながら出かけて行った。開場と同時に中に入り、お大尽な席を確認してから、三階まで上がって劇場全体を見渡したわ。以前ほど傾斜がきつくなくて、三階席は怖くなくなってた(前は、転がり落ちそうな気持ちがした)。しかし、良い劇場だ〜、歌舞伎座。芝居を観る喜びに溢れてる。
 三階ロビーに掲げられた、亡くなった歌舞伎役者たちの写真を眺め、その錚々たる顔ぶれの中に勘三郎の姿を見つけてちょっと悲しくなり、落ち込んだところに、甘〜いいい香りがしてきたの。吸い寄せられるように屋台でたい焼きを買って、お大尽席でお茶を飲みつつ、たい焼きを食べてたら開演時間になった。
 
 お話は(細かく説明するつもりはないけど)、浦島太郎的な、昔話というか寓話という感じ。耳男という男が一人、竜宮城ならぬ桜の森に迷い込み、妖しくも美しく残酷なお姫様に会い、魂を持って行かれてしまう、そういう物語。そこにオオアマという男の天下取りの副筋が絡む。
 幕が開いた途端、桜の森の湿った美しさに息を呑んだの。
 薄暗い、湿った妖気の漂う、怪しい桜の森。蠢く鬼(妖怪)たち。
 『桜の森の満開の下』は野田秀樹としては再再演くらいらしいけれど、マダムは今回が初めて。芝居が始まって吃驚。完全に遊眠社だーと思って。
 本は言葉を少し七五調にしたくらいで、殆ど変えていないらしい。でも、歌舞伎役者がやると、歌舞伎になるんだね、これが。野田秀樹が「歌舞伎って何?」と訊いたら勘三郎が「歌舞伎役者がやれば歌舞伎」と答えたそうな。ていうか、そこ以外に、遊眠社との違いが見つけられない。それくらい、野田戯曲が、まんま歌舞伎になってた。
 ただ、野田戯曲の特徴である、言葉遊びに関しては、歌舞伎役者たちにはちょっと(ノリが)難しかったのか、聞き取れなかった箇所が多かった。言葉遊びを効かせるための畳み掛けるスピードも、足りなかったし。一方で、動きに関してはNODA・MAP以上にNODA・MAP。桜の森に妖しく蠢く鬼(妖怪)の動きとか、鬼の遊園地のシーンで、人海戦術でジェットコースターやメリーゴーランドを描いて見せるところなんて、さすがの身体能力なのだった。
 
 とにかく夜長姫(七之助)の、ぞわ〜っと背筋が寒くなるような美しい冷酷さがたまらないの。もう化け物ですね、彼。化け物の役なんだけど。
 耳男(勘九郎)は「調子が良くて気が弱い」っていう、お父さんがやったら滅茶苦茶上手かっただろう役なので、少し損をしているかもしれない。でもこの役は彼にぴったりだった。
 それと、一人だけ人間だった(?)オオアマ(染五郎)の演技に迷いがなくて、感心した。オオアマは、鬼の世界の勢力争いをうまく利用し、夜長姫を娶り、天下を取るのだけど、イケメンの青年がどんどん策謀家の顔を見せていくところをうまく演じてる。
  
 
 観ていると、どこか上の方から「なぜ俺にやらせない?」って勘三郎が化けて出てきそうに思えて。
 『足跡姫』からスタートして『表に出ろぃ』まで、野田秀樹が1年かけて勘三郎を鎮魂する、クライマックス。セットも衣装も、さすがの歌舞伎座、豪華だったよ。
 ビリー・エリオットを観て、イギリスへの敗北感に打ちひしがれてたマダムだけど、たった一週間で、これが日本の芝居だよ〜って心の中でほくそ笑むことができて、すっかり気持ちは挽回したのだった。
 
 観終わった後に、『演劇界 9月号』の野田秀樹のインタビューを読んだの。この『桜の森の満開の下』も、勘三郎と一緒に、やりたいねって話していた作品なのだそう。とてもいいインタビューだったので、観劇に満足した方は、読んでみてね。

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コメント

桟敷席、私は座ったことがないです。マダムがうらやましい!
普段は3階席の私、売り切れていたので、やむなく1階席を取ったのですが、結果的に正解でした:ほとんど現代劇そのままに演じられていたので、ファジーに細かく変わる役者さんの表情や動きを観るのに、1階席が最適でした。
歌舞伎役者の身体能力をもってすれば、大概のものはこなせてしまうんだなぁと感心しました。今月、他の役もやりながら、これをやっているのかと思うと驚異的ですね。
あと、語呂合わせのための言葉という点では、野田脚本は歌舞伎に通じるものがあるのかしらと思ったりもしました。

パイワケットさま。
桟敷席はね。端っこにあるので、すごく見やすい、というわけではないです。ないですが、
①靴を脱いで、畳の上で座椅子に寄りかかって見られる。
②掘りごたつ仕様なので、足が楽。
③もちろん、あぐらでも体育座りでもOK。
④前に台があって、お茶も飲めるが、なによりそこに肘をついて、頬杖ついたまま芝居が見られる。
⑤一段高いところにあるので、前の人の頭とかは視界に入らない。
などの、利点が数々あります。
私が特に満足したのは、④! 頬杖ついてオペラグラスって、楽ですわ。
野田戯曲がまんま、歌舞伎になっちゃうところは、思ってもいなかったけど、してやられましたね。

野田戯曲がまんま歌舞伎になる。
そりゃ見たかったなあ。
「野田版ねずみ小僧」はシネマ歌舞伎で見たけれど、舞台で見たかった!と歯噛みしたものです。

七之助が良かったのね。
そう、七之助はすごい。
彼は舞台に立っただけで、オーラがぱーっと飛び散ります。
都民半額鑑賞会で歌舞伎をチョイスすればよかったかなあ。
このところ、歌舞伎に諦めの気持ちが出てしまって。

桟敷席での野田歌舞伎、人生の贅沢というものでしたね。
羨ましすぎる。

サワキさま。
お誘いすればよかったです。チケットをお願いするとき、一瞬だったので、その余裕がなかった。もし再演があったら、ご一緒しましょうね。
野田秀樹は本当に歌舞伎との相性がいいんです。日本語の追求と、徹底的に役者の身体にこだわるところが、ぴったりなのよね。
野田さん、勘三郎がいなくても歌舞伎をやれるって、思えたかな?追悼するってそういうことですよね。残された者が、生きて行こうと思えることが、本当の追悼なんだと思います。

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