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『子午線の祀り』を観る

 さて、久々の劇場。そして観劇の夏、到来だー。7月8日(土)マチネ、世田谷パブリックシアター。

『子午線の祀り』
作/木下順二 音楽/武満徹
演出・主演/野村萬斎
出演 成河 河原崎國太郎 今井朋彦 村田雄浩 
   若村麻由美 星智也  ほか

 『子午線の祀り』はいろんな意味で特別な作品ね。
 初演(1979年)版は、テレビの中継で見たような・・・。記憶は曖昧。細部は憶えてないけれど、滝沢修とか山本安英とか若き(?)日の野村万作(萬斎のお父さん)が出演していたの。新劇界の重鎮と、伝統芸能の名門役者が一堂に会する公演。当時は、画期的な企画でね。本は木下順二だし、音楽は武満徹だし。
 本は「平家物語」の語りと役者の演技を融合するように書かれていて。さらに、人間の営みを子午線の彼方から眺めるような壮大な視点があって、その語り(ナレーション)が随所に挟み込まれて。色々と挑戦的な作品だったのよ。マダムはテレビで中継映像を見て、「テレビじゃスケールが全然伝わってこないなあ」と歯がゆかったことだけ、憶えている。
 野村萬斎にとって、これを演出し主演することは特別な意味があること。狂言師としての仕事の枠を広げた先駆者の、後継ぎなわけだから。
 でもその気負いが、彼を不自由にしたような気がする。

 いつもだと、妙にだだっ広く感じる世田パブだけど、今回ばかりはこの広さが役立っていた。豪華なセットと美しい照明。
 舞台の上にもう一段高い舞台を組み、それが前にせり出してきたり、引っ込んだりする。段の間の隙間を利用して、そこからたくさんのコロスが出ては消え、階段なとの大道具もそこから現れ、暗転がほとんどいらない。
 舞台の前方で演技していた人たちが、せり出してきた舞台の下に飲み込まれて消えていくのを、しばらく感心して眺めたりしたのよ。

 だけど、芝居自体はなんだか凡庸なのだった。
 平家と源氏が戦うのは一番最後だし、平知盛(萬斎)と義経(成河)が直接ぶつかることはないの。離れた場所にいる両陣営の、それぞれの葛藤が別々に描かれながら話が進んでいくのね。
 だから芝居の肝は、平氏陣営ならば四国へ落ち延びた知盛と、支える四国の豪族阿波民部(村田雄浩)との、味方でありつつも権謀術数が巡らされてる様子。そして源氏陣営ならば義経と、頼朝から目付として送られている梶原景時(今井朋彦)との腹の探り合い。双方盛り上がって壇ノ浦の戦いになだれ込んでほしかったんだけど。
 源氏側の、成河と今井朋彦の探り合う会話はなかなか面白かったの。義経の、頼朝の弟だというプライドと、なのに認めてもらえないコンプレックスが、会話から滲み出てるし、景時は景時で、頼朝を支える家臣として義経と対等だ、というプライドが前面に出るのね。
 だけど平家側がどうも面白くなかった。野村萬斎の詠うような台詞は、宙に漂うばかりで相手(特に阿波民部)にしっかり届かない。なので、芝居ががっぷり四つにならないの。民部の言葉は知盛にちゃんと向かっているんだけど。知盛の演技に深さがない。知盛の方は恋人(影身)を殺した民部に対する憎しみと、それでも手を組んでいかなければならない武将としての判断という、相反する気持ちを湛えていなければならないんだけど、詠うような台詞は上滑りして、伝わってこないの。
 
 初演の時は、野村万作や滝沢修御大の、異種格闘技戦っていうのがまず大きな売りだったじゃない? だから演出家野村萬斎は、自分が古典芸能側だってことを台詞の言い回しで表そうとしたのね。でも、それが少し空回り気味だったの。
 もはや異種格闘技戦は珍しくないし、それを売りにするなら、何か違うものを見つけなきゃいけなかったのかも。
 演出に専念すれば、そこをしっかり追求できたんじゃないかしら。全体のテンポももっと緩急がつけられたと思うし。それと、初演時よりはるかに技術は進歩しているわけなので、舞台効果ももっともっと、びっくりするような使い方ができたんじゃないかしらね。
 やっぱり演出か主演か、どっちかにすればよかったんじゃないか、とマダムはちょっと残念だった。

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コメント

僕はプレビュー公演で観たんですが、其のせいで、知盛が目立たないなぁと思っていたんですが、一週間経っても変わらないのか・・・。
木下順二の本と武満の音楽が巨大過ぎなのかな?

叡さま、こんにちは!
来ていただけて、とても嬉しいです。
本と音楽を変更することは、冒涜のように感じられちゃいますよね。でも、初演から40年経って、新しい演出を試みてもいいはずでした。
当たって砕けてもいいのにね。

二度目を7/17に観てきました。萬斎と絡む台詞応酬が練度が上がってました。千円も安いプレビュー公演で文句を言ってはいけなかったかと思ってる所です。

叡さま。
舞台ってほんとに生ものですね。
私はプレビューじゃなかったんだけど、後半のチケットを買えばよかったかなあ。

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