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2時間でもちゃんと『リア王』 子供のためのシェイクスピア

 芝居に行くも帰るも汗びっしょりだわ。7月15日(土)マチネ、あうるすぽっと。

子供のためのシェイクスピアカンパニー『リア王』
作/シェイクスピア 訳/小田島雄志
脚本・演出/山崎清介
出演 福井貴一 戸谷昌弘 土屋良太 佐藤あかり
   若松力 加藤記生 チョウヨンホ 大井川皐月 山崎清介
 

 伊沢磨紀が出ないことに気づいたのはチケットを買って、だいぶ経った頃だったの。
 伊沢磨紀は日本のキャサリン・ハンターである、とマダムは思っているのだけれど、1年に1度、子供のためのシェイクスピアで伊沢磨紀に会う。それがあたりまえのことになっていたので、ショックは大きかったわ。チラシを見て「あ、リア王ね、伊沢さん、ゴネリルでもリーガンでもコーディリアでもいいけど、リア王もできるね」なんて考えていたんだもの。

 話は『リア王』なんだから、あらすじの説明はしなくていいよね?
 
 配役を書き出してみると。
 リア王は福井貴一。コーディリアと道化を大井川皐月。ゴネリルとコーンウォール公(リーガンの夫)を加藤記生。リーガンとオールバニ公(ゴネリルの夫)を佐藤あかり。グロスターを戸谷昌弘。その長男エドガーをチョウヨンホ。その次男の策士エドマンドを若松力。ゴネリルの執事オズワルドとフランス王を土屋良太。そして山崎清介はケント伯。人形はケント伯と行動を共にする・・・えーと名前失念(人形の声を山崎清介がやっているので、人形が山崎清介に似てるのは当然なんだけど、今年は山崎清介の方が人形に似てきた気がした。なんでかしらね?)。
 いつも感心するけれど、この少人数でシェイクスピアをやり遂げてしまうのよ。毎年だから、どんな風に乗り切るのか、その工夫を見ることが大きな楽しみ。今回も、ゴネリル夫妻とリーガン夫妻を加藤記生と佐藤あかりの二人でやるという離れ業が見ものだった!
 そして毎回2時間ちょっとにまとめてくるのも、すごいの。いろんな伏線とか、きっかけの台詞とか、知り尽くしたうえでの改編なので、そこもまたマダムは感心しきり。
 役者さんたちは少数精鋭。このカンパニーはみんな上手いの。マダムはエドマンド(若松力)の色悪ぶりに惚れ惚れしてたんだけど、そこはほら、どんな時にもイケメンを見逃さないってことだから。
 
 あとはね、いつも演技の話に終始してしまうので、その前にひとつ。
 このシェイクスピアシリーズの衣装(三大寺志保美)がすごおく素敵! 役に合った、選び抜かれた色合い、生地の美しい光沢に、毎回見惚れる。

 始まるまで配役は知らなかったので、福井貴一がリア王として登場した時、おおおー、と思った。彼の舞台は何度か見ているはずだけれど、その上手さに舌を巻いたのは2年前の加藤健一事務所制作の『ペリクリーズ』のとき(その時の記事は→これ )。台詞の心地よさったらなかった。
 今回も台詞回しの巧みさはいかんなく発揮されていたのだけれど、マダムが引きこまれたのは「老人としてのリア」像がブレなく存在していたからなの。
 リアは、「老いてわがままになり正常な判断ができなくなった迷惑な老人」のように描かれているところが多分にあって、海外では「認知症の老人」として演出されている舞台もあるそうな。でもね、マダムは福井貴一のリアを見たら、「認知症の老人」というような言葉では到底片付けられないリア像がある!と感じたの。
 リアは老いたからわがままになったのではなく、王だったから元からわがままなんだよね。そして王という身分とアイデンティティーが、ピッタリくっついてる人なの(さらに言えば、王って多分そういうものよね)。だから退位しても王として振舞っちゃうし、王として振舞うなと言われたら、どうすればいいかわからないのよ。まるで、定年退職したらそのあと、どう生きたらいいのかわかんない仕事人間みたい。
 そして色々と辛酸を舐めたあと、死の間際になってやっと、王ではなく一人の人間として、自分を一番愛してくれた娘は誰なのか、誰が本当の家臣だったのかを知るの。話の始めに「王を降りる!」と言ったけど、本当に退位して一人の人間になれたのは死ぬ時だった。憐れなリア。
 というようなことを、福井リアは見せてくれたのだった。演出によって、そして誰が演じてくれるかによって、戯曲が姿を見せる面が違う。あたりまえなのかもしれないけれど、このあたりまえの楽しみにちゃんと行き着くには手練の技が必要で、観客としてその技を持つ人たちを応援したいと、改めて思ったマダムだったわ。
 
 そんなわけで、来年も楽しみにしています。伊沢さんのことも、もちろん、待ってる。

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