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2017年4月

『エレクトラ』を観る

 予習する暇はなかった。4月15日(土)ソワレ、世田谷パブリックシアター。

りゅーとぴあプロデュース『エレクトラ』
原作/アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス「ギリシア悲劇」より
上演台本/笹部博司 演出/鵜山仁
出演 高畑充希 村上虹郎 中嶋朋子 横田栄司
   仁村紗和 麿赤児 白石加代子

 マダムはギリシャ悲劇、あまり得意ではないのよ。神様がなんでも決めちゃうのが不服なの。
 だから、今回は、初見の高畑充希への関心と、横田栄司の良い声に聞き惚れに行ったの。
 最初に言っちゃうけど、アイギストス(横田栄司)の出演時間があまりに短く、1幕終わった時点で帰ろうかと思ったよ。聞き惚れる暇がないほど、短かった!
 なんてもったいないことをするの?ずいぶんじゃないの。
 でもそれは、芝居そのもののお話ではない。だからこれ以上は言わないことにする。

 ギリシャ悲劇には全く詳しくないので、何一つ偉そうなことは言えないけれど、なんだかはっきりしない舞台だったの。
 違和感があったのは、名のある達者な役者さんが揃っているのに、演技のメソッド(というか、発声法とかテンポとか色合いとか、リアリズムなのかとか演技の向かう方向)がバラバラな感じがしたこと。白石加代子は早稲田小劇場の白石加代子だし、麿赤児はアングラだし、横田栄司は文学座だし、中嶋朋子は鵜山組シェイクスピアの演技だし、高畑充希はテレビドラマに出ているときとあまり違わないし。なので、演技(の種類)がかみ合ってなくて、シーンを重ねても、こちらの気持ちが積み上がっていかないのね。
 鵜山演出は大抵、たとえば昨冬の『ヘンリー四世』のように、緻密に積み上がっていって、最後にはちゃんと受け取れるものがある。のだけれど、今回は、散漫で、なにがやりたかったのか、焦点をどこに持って行きたかったのか、わからなかったわ。
 台本にかんして素朴な疑問なんだけど、アイスキュロスとソフォクレスとエウリピデスはそれぞれ作風ってものはないの? それを無視して簡単に合体させられちゃうもんなんだろうか? やたらに軽くて、一本スジが通らない感じがするのは、やっぱりこの台本のせいじゃないのかしら?
 
 初見の高畑充希に関して言えば、なかなか面白い舞台女優になりそう。期待大〜。だけどまだ、相手と相乗効果を生む感じにはならないので、オレステスとエレクトラの二人だけの会話だと、聞いてるのが辛い。グダグダになっちゃうのね。
 でもそのオレステス(村上虹郎)、2幕になってイピゲネイアと二人のシーンは、なかなか面白かった。それはもう、中嶋朋子の力なの。もっと早く出てきてくれればよかったのに。
 
 芝居自体がどうも印象散漫なので、マダムは途中で他のことをいろいろ思い浮かべたのだけれど。一番思ったのは、同じ頃の同じ登場人物を描いていても、ギリシャ悲劇とシェイクスピアだと、こうも違うのかってこと。
 マダムにとってのアガメムノンといえば、同じ鵜山演出のシェイクスピア『トロイラスとクレシダ』の鍛冶直人アガメムノンなの。どんな場所にも自分のディレクターズチェアを運んでって座る指揮官アガメムノン。
 『トロイラスとクレシダ』のアガメムノンやギリシャの将軍たちは、みんな等身大の人間で、なにより合理的に描かれていたの。合理的で、ドライで、名より実を取る考え方が浸透している感じ。
 同じアガメムノンという名の人物でも、ギリシャ悲劇の中にいるのは、神と対峙し、実ではなく名を選び(だって生贄に自分の娘を差し出しちゃうんだもの)、そのせいで妻に殺されてしまうような男。ドライさは全然無い。
 比べると、シェイクスピアはすでに、今の私たちと同じような目線で人間を見ている。ギリシャ悲劇は、やっぱり私たちと同じ地平には無いものなのかもしれない。等身大の人間じゃないんだよね、描いているものは。
 とすれば、今回の舞台は、ギリシャ悲劇らしくなかった。イメージとして壮大さがなくて、隣のお姉さんがお母さんを嫌ってる話みたいになっちゃってたもの。それで、最後にお母さんを許して、自分もお母さんになろう!なんてさ。まるっきり隣のお姉ちゃんのお話でしょ?
 
 でもね、凄くつまんなかった訳でもないのが不思議なの。だって、観終わって1週間近く、あーでもないこーでもないって考えていたんだもの。こんなに反芻できるなんて、まるっきりつまらなかったら、ないもんね。

 
 さて、マダムはゴールデンウィークに引越しを予定しております。かなり忙しく、またインターネット環境が一瞬途切れることもありますし、次の更新までには間が空きますこと、お許しを。また、コメントをアップしたりお返事したりも、遅くなってしまうかもしれませんので、ご承知おきくださいね。


 
 

様式美な『王家の紋章』再演

 春うららな平日。仕事を休んじゃったよ。4月13日(木)マチネ、帝国劇場。

ミュージカル『王家の紋章』
原作/細川智栄子 あんど芙〜みん
脚本・作詞・演出/荻田浩一 作曲・編曲/シルヴェスター・リーヴァイ
出演 メンフィス:浦井健治 キャロル:新妻聖子 
   イズミル:平方元基 ライアン:伊礼彼方 アイシス:濱田めぐみ
   イムホテップ:山口祐一郎 ほか

 初演を観て、結構お腹いっぱいだったので、再演に行くかどうか、迷ったの。
 殆ど浦井メンフィスの定点観測みたいな意味で、行ってみることにしたのだけれど、初演の時は日程の都合を優先して失敗したので、今回はキャストの組み合わせを吟味して、新妻キャロルの日に行ってみた。
 それはやはり正解だったね。初演に比べて、キャロルの細やかな感情の揺れが出ていたし、たとえば同じ遺跡のお棺の上の花を素手で取り上げるにしても、恐る恐るな感じがあって、「え?素手で?」みたいな反感は起きなかったしね。ラブシーンもちゃんとしてたしね。
 
 再演にあたって、演出家は色々と手を加えていたの。装置はだいぶ派手になって、初演のスカスカ感はかなり解消されていたし、衣装もメンフィスは多分、増えてたように思う。でも、一番手を加えたのは、台本ね。
 一幕については、余分な枝葉を取り除いて整理して、だいぶわかりやすくなったなあと思った。でも二幕になったら、話がスッキリしすぎて内容の深みのなさが露呈したような。アイシスの姉の横恋慕も後ろに引っ込み気味だったし。やっぱり二幕はイケメン三人(メンフィスとイズミルとライアン)を観ててくださーい、みたいになってて、それが初演より強化されて様式美になってるんだった。マダムは(あまり詳しくはないんだけど)宝塚みたい、とちょっと思った。
 結局、どこをどう直そうが、もともとテーマに深さが無い以上、味わいを増すことは難しいのね。あとは様式美をどんどん極めるしか手がないのかもしれない。
 
 浦井メンフィスは、傲慢不遜な王様の部分は変わらず、でもキャロルに恋をし始めてからの歌声が、初演よりも、優しい声になっていて、「キャロルと出会って変化するメンフィス」を精一杯表現していたわ。マダムはその優しい歌声が好きなので、それが聴けて嬉しかった。けれど、彼の役者としての力量も幅も歌の力も、こんなものではないものではないと考えているので、もっと深い(深刻な役、という意味ではないの。やり甲斐のある役、と言う意味です。)役をやらせてあげたいとしみじみ思ったのだった。
 

ジキルとハイドとマダムと私

 かれこれ8年も前のこと、ブログなるものを始めてみようとしたとき、タイトルはキャッチーに、と考えた。内容からすれば「主婦の観劇日記」でよかったのだけれど、そこは少し特色が出るように、とね。思えば、よくぞ『マダム ヴァイオラ』なるものを思いついたと、我ながら感心する。
 そこからマダム文体みたいなものが生まれたせいで、このブログは続いてきたのよね。普段なら上手く言えないことも、この文体を使えばズバリと言うことができ、照れくさいようなことだって、ノリで表現できてしまう。
 マダムという世を忍ぶ仮の姿を手に入れたのよ。

 そこからはジキルとハイドさながら、二人の人間が自分の中にいるのだった。日々の生活、仕事、家庭、両親を見送ったこと・・・実人生の方は、けっこう待ったなしで次々課題を突きつけてくるものね。それを陰ながら支える仮の姿。実人生で疲れ果てても、マダムヴァイオラの方はけっこう余裕で芝居を堪能してたりするんだった。疲れてるからこそ、芝居に対して鋭敏で、受け取るものが大きかったりするんだった。二人の間を行き来することで、なんだかバランスをとっていられたの。
 ところが。

 最近、気がついたのだけれどね。
 どうも、実人生の方が、世を忍ぶ仮の姿化してきてるのよ!ジキルがハイドに乗っ取られたみたいに。
 それはたぶん、実人生の方の課題が少しずつ片付いていき、仕事はお金のために淡々とこなし、家では断捨離する、というような波風のない日々がやってきて、その中に何があるかというと、とりたてて何もない。実人生の影が薄いこと!
 一方、マダムヴァイオラには、8年もブログをやってきただけのことはあり、心を開いて芝居を語れる友が沢山現れていて。実人生と、豊かさがまるっきり逆転しちゃってる感じ。
 ジキルはハイドに乗っ取られる前に、ハイド諸共消えてみせたわけだけど。そんな物騒な話ではなくてね。なんか、このままマダムヴァイオラに乗っ取られても、それはそれでいいのかな、なんて思ってさ。

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