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2017年1月

岐路に立つカクシンハン『マクベス』

 芸劇は、ざわざわしていたわ。1月27日(土)マチネ、東京芸術劇場シアターウェスト。

カクシンハン第10回公演『マクベス』
作/シェイクスピア 翻訳/松岡和子
演出/木村龍之介
出演 河内大和 真以美 岩崎MARK雄大 穂高 白倉裕二
   鈴木智久 鈴木彰紀 鈴木真之介 東谷英人 塚越健一 ほか

 『ジュリアス・シーザー』での出会いから1年、早くもシアターウェストに進出と聞き、おお、やったじゃん、と盛り上がったマダムだったのだけれど、演目がマクベスと聞いて押し黙ったの。マクベスには悪い思い出がある。詳しくは言うまい。そしてマクベスって、演出家が何か色々したくなっちゃう本なのよね。シェイクスピアにしては無駄がなくてやけにストレートな作りだから、なにか仕掛けたくなっちゃう。
 で、もちろん、仕掛けちゃいけないなんてマダムは少しも思ってないの。ただ、シェイクスピアのセリフを大切にしてくれさえすれば。
 
 しかしそれにしても、仕掛けが満載だったー。見たこともないマクベスってホントね。そういう意味では。
 まず興味があったのは、殺陣をどうするだろう?ってことだったの。1年間見てきて、普通の殺陣をやらないことにこだわりがありそうだったし、かといって、この大きさの小屋でマクベスで、殺陣を全くやらないわけにもいかないでしょう? そうしたら、パイプ椅子を使っていたので、おおそう来たか!と思った。使い方はなかなか凝っていて、最後にはパイプ椅子がちゃんと剣に見えたの。面白い!
 他にも、マクベス夫妻以外が全部揃って魔女やったり、岩崎MARK雄大によるシェイクスピア・ラップ講座みたいなのも面白かった。
 仕掛けの良し悪しを言っても、ほとんど好みの問題みたいになっちゃうから、ひとつだけマダムがこりゃダメだと思ったものを挙げると、それはミスチルを延々流したことかな。マクベスとの関係がよくわからなかったし、ミスチルの桜井和寿は、今の日本で一、二を争う吟遊詩人だもん。彼の書いた詩と彼の声は不可分のものだから、そこに被せてマクベス夫人が朗読しても、負けちゃうよ。マクベス夫人だけじゃなくて、芝居全体がミスチルの歌に負けちゃった感じがして、かなり残念な気持ちになった。
 挑戦する気持ち、思いついたことを実現させようとする気持ち、すごく伝わってきた。その一方で、シェイクスピアの書いたセリフを大切にやり取りするところが、おろそかになったなあと感じて。これまでの公演にはちゃんとあったのに。劇場が大きくなった分、勢いだけじゃ埋められない。たくさんあるいいシーンが、よくわからないまま過ぎていって、河内大和だけを見に行ったようになってしまって。河内大和と、周りの役者との間に差ができすぎてしまった。これじゃ、彼もこれ以上先へは行けない。
 
 シェイクスピアの上演はたくさんある。シェイクスピアは、どんなに中身を改変しようともう文句は言わない。だから、筋書きだけもらったような上演もあるし、なんだってOK。
 でも、マダムが好きなのは、台詞から彼の書いた真実を浮かび上がらせようとする上演で、そのためには結局、役者が台詞を自分のものとして発してくれなければ始まらない。他のことはその次なの。日本語に翻訳したら、リズムも失われてしまうんだから、台詞をちゃんとやり取りしなかったら、もうシェイクスピアじゃなくてもよくね? ストーリーなんて、シェイクスピア自身だってどこかから持ってきてるわけだし。
 
 だけど、これは全部こちらの好みの問題。題名の「岐路に立つ」のはカクシンハンのほうじゃなくて、マダムのほう。自分の楽しみが増えるのか、減るのか、マダムは岐路に立ってるわ。

新発見にワクワク『スパイに口紅』

 マダム、小劇場へ回帰、の機運高まる。1月27日(金)ソワレ、花まる学習会王子小劇場。

Live Up Capsules 公演『スパイに口紅』
作・演出/村田裕子
出演 宮原将護 遠藤綱幸 虎玉大介 桂弘 橘颯 杉山雅紀
   高山和之 山田隼平 菊地真之 検崎亮 弓削郎

 全く予備知識なく、突然どうしても観たくなって発作的に行ってしまった芝居。なぜ知ったかについては後で話すね。とにかく何にも知らないで行ったので、当然、役者も全く知らない人ばかり、と思っていたんだけれど。
 始まってみたら、あ、知ってる!と思った役者が二人。一人は劇団AUNの最若手の山田隼平。もう一人は祁答院雄貴で、たぶん去年のカクシンハンの舞台に出ていた(ような気がするんだけど)。

 第二次世界大戦前夜の満州が舞台。そこで日本人が経営する昭和通商株式会社という小さな怪しい商社のお話。本土(日本)から派遣された大学を出たばかりの坂本(橘颯)が、会社にたどり着いたところから話は始まる。坂本は悪い足をひきずって歩いていて、気弱にも見えるが、真面目でひたむきさを感じさせる。けれど、彼が赴任してきた昭和通商という会社は、一筋縄ではいかない男たちの集まりで、怪しさがいっぱい。
 社長の堀田(宮原将護)が自らバラしているように、中古の(使い物になるか疑問の)武器を買い集めては、どこかに売るような詐欺っぽい商売。そして儲けは日本軍の上層部に資金として渡しているような、そんな会社。所属する人間はみんな、一匹狼みたいな男ばかりで、互いにどんな仕事をしているか全てを語らず、互いに信用していない。唯一彼らがまとまっているとすれば、それはかろうじて堀田の人徳のおかげのようなんだけれど、堀田もまた軍の将校だった過去があり、背景には巨大な闇がありそうなの。
 売るものが調達できなくなって、昭和通商はついにアヘンに手を染めることになり、アヘンを取り仕切っている中国人リー(菊地真之)や日本軍の軍人、憲兵などが入り乱れて、騙し合いながら、アヘンの調達や取引が進んでいく。裏切りや逃亡などが一つ一つ明かされるたびに、あ、この人、軍のスパイだったのか、あ、真面目そうだった坂本も? え、この人中国人ってことになってたけど、実は日本人?えー??じゃあ、社長はどうなの?!という感じで、信じた設定が次々裏返っていき、最後はもう、「そして誰もいなくなった」状態になるの。夢中で見入って1時間半が、あっという間に過ぎた。

 なによりも凄いのは、これだけの若い役者だけで、演出家もたぶん若い人だと思うんだけど、戦前のお話に圧倒的なリアリティを持たせたこと。
 マダムだって戦前を見たことがあるわけじゃないけど、子どもの頃、父がテレビでしきりと見ていた『戦争と人間』(山本薩夫監督)という映画を思い出したくらい。現代の若者が演じる時、立ち姿だけでもう、リアリティなくなってしまいがちなんだけれど、みな、佇まいがちゃんと戦前! 立ち姿も、どこか暴力的な匂いも、互いを信じきらないヒリヒリした目線や怯えも、それから中国語のやりとりも、徹底して演出が行き届いている。
 マダム的好みを言えば、主役のイケメン宮原将護に、目を奪われていたのだけど、それだって、この堀田という役に強烈に惹かれたの。複雑で、かっこいい役!
 そして更に思うのは、『戦争と人間』を思い出させながらも、この芝居は新しい、ということ。古典を再演するのとは違うの。新しい視線がある。それはね。見る側が気持ちを楽にして拠り所にできるような「いい人」が一人も出てこない、ということよ。それは戦前、戦中を描く時、日本人がなかなか脱することができなかった観点で、悪いことをした後ろめたさから逃げたいので、いい人もいました、と描いてしまいたいの。それが楽だから。でも、『スパイに口紅』の作家は、凄く客観的。変な後ろめたさから解放されているの。そこが新しい!
 昨年見た谷賢一の『ウィトゲンシュタイン』とかアマヤドリ広田淳一の『月の剥がれる』とか、見てないけどチョコレートケーキの『治天の君』とかと同じように、古い(マダムを含む)価値観から自由な作家が現れつつあるのでは?と期待が膨らむわ。 村田裕子って誰?調べたけど、全然情報がない。どんな作品描いてるのか、どんな劇団(?)なのか、知りたいんだけど。

 今回この芝居を偶然にも見に行けたのは、高木登さんという方のホームページでこの芝居の評を読んだから。シェイクスピアに詳しい方で、マダムは定期的にそのホームページで評を読んでる。同じものを見た時、どんな感想をお持ちかしら?と興味深く読む。
 でも、シェイクスピア以外の芝居の評を読んで、どうしても観たくなっちゃうなんてことはこれまでなかった。素早く評が載り、タイミングよくマダムが読んで、いてもたってもいられなくなり、まだ公演中で、しかも仕事帰りに間に合うことができたなんて、幸運が重なったわ。
 できることならば、マダムのブログもそうありたい。読んだら劇場に走って行きたくなるような、そんな評が書きたい。

飽きさせない作り『フランケンシュタイン』

 久々に行ったけど、この劇場は好きだな。1月21日(土)ソワレ、日生劇場。

ミュージカル『フランケンシュタイン』
音楽/イ・ソンジュン 脚本・歌詞/ワン・ヨンボム 
潤色・演出/板垣恭一 訳詞/森雪之丞 音楽監督/島健
出演 ビクター・フランケンシュタイン&ジャック 中川晃教
   アンリ・デュプレ&怪物          小西遼生
   音月桂 鈴木壮麻 相島一之 濱田めぐみ  ほか

 飽きさせない作りになってて、楽しかった〜。キャストは歌の実力派が揃っていて、2階後方からの観劇でも、十分堪能したの。
 お話は、みんなもよく知っているフランケンシュタイン博士と、彼が作り出してしまった怪物の物語。

 あらすじは。
 軍医アンリ(小西遼生)は、敵兵を治療したことを上司に咎められ、銃殺されそうになったところを、科学者ビクター・フランケンシュタイン(中川晃教)に救われて、ビクターの助手になる。ビクターは「人の再生」を目指して実験を繰り返していて、周りからは呪われた家に生まれた狂人扱いされ、恐れられている。アンリも最初はビクターに得体の知れないさを感じているんだけど、子供の頃からのビクターの孤独を知るにつれ、彼を受け入れ、唯一の友人となるの。
 しかし話は急転直下、無実の罪でアンリが逮捕されてしまう。ビクターの身代わりに自首したアンリは、ビクターの必死の訴えにもかかわらず、あっけなく断頭台で処刑されてしまう。
 ビクターは友人の再生を決意する。研究室に切り落とされたアンリの首を持ち込み、他人の肢体の体とつなぎ合わせて、実験を開始する。実験は成功し、アンリの顔を持った男が再生してくるのだが、それはアンリとは別の怪物だった・・・。
 ここまでが1幕。
 2幕は、怪物が逃げ出してしまい行方知れずのまま3年が経ち、ビクターをいとこジュリアの結婚式の日から始まる。幸せもつかの間、ビクターの周りに次々事件が起こる。ジュリアの父ステファンが殺され、その現場に倒れていたエレンはその罪を着せられて絞首刑になってしまう。復讐の気配を感じたビクターの元に、ついに怪物が現れ、二人は対決する。復讐を遂げに来た怪物だったのに、ビクターのとどめを刺さず、最後はビクターの銃弾に倒れる。怪物は、創造主に倒されることを望んでいたのだった・・・。
 という物語、基本はね。あらすじ終わり。

 とにかく、素早く話が展開し、階段の向きを変えるだけで無駄なく場面転換し、子役を使った子供時代の切なさとか、アンサンブルを使った群集心理の怖さとか、ビクターと怪物のそれぞれの過去の振り返りとか、ちょっとグロいシーンとか、エピソード積み重ね具合がすごく工夫されているの。そして、床の上に木漏れ日のような模様ができる蒼い照明が美しくてね。

 しかし、マダムのごく個人的な最初の感想は、これが二度目に見る小西遼生が、ほとんど裸同然であったことのショック。初めて彼を見たのは『十二夜』で、マダム史上最も優雅で美しいオーシーノー公爵だったんで、ギャップが大きすぎてね。裸じゃない時も、どうも地味な衣装で、なんとかならなかったの?と、少し悲しかった(いえね、怪物なんだから美しい衣装ってわけにいかないのは重々承知してるけどね)。

 でも、ミュージカルに慣れてないマダムにも、メインキャストの歌のレベルの高さはよーくわかったの。中川晃教、濱田めぐみは言わずもがな、小西遼生も音月桂も、芝居の歌として気持ちを載せて客席に届けることができる人なのね。それぞれに二役を演じるんだけど、キャラクターの演じ分けが歌の隅々まで及んでいて、見事だったわ。
 で、なかなか楽しく観たんだけれど、これほど材料が揃っても、中川晃教の歌から演技の稲妻出まくり!というようにはならなかったんで、この後は、どうしてなのかを考えてみるね。
 
 いちおうビクターと怪物(アンリ含む)の二人主役という扱いになっているこの芝居、実際の主人公は怪物の方なのでは?
 ビクターは色々と悲しいことが襲ってはくるけど、基本マッドサイエンティストに変わりはないでしょ?(親友の首を拾ってきて再生しようなんて。ヨカナーンの首に執着するサロメのよう。狂気の愛)それに比べ、怪物には葛藤がある。ドラマがあるよ。(「ブレードランナー」のレプリカントを思い出したね)。アンリの時は友人の身代わりとなって死を選び、怪物になってからは、自分は何のために存在しているのか(させられたのか)という苦しみがあり、自分を生み出した博士への復讐心が強すぎてまるで愛?を求めているかのようで。
 芝居の中に1本筋を通しているのは、怪物の方だよね。歌に宿る思いも、怪物の方が熱いし。だから、中川晃教と小西遼生、逆の配役の方が良かったんじゃないか、というのが一つ。
 それと、実は台本に難あり、なのかなあ。
 飽きさせないようにぎっちり詰め込まれたエピソード。確かに飽きないで観たけど、そのエピソードの大半に、既視感があるの。いろんなミュージカルの場面の寄せ集めっぽくなってる。エピソードが有機的に絡まず、ラストに集約していかないので、演技の稲妻が出る余地なしになっちゃったのではないかしら。
 どんなにすごい役者でも、台本に書かれていない感動は生み出せないんだという、至極あたりまえの結論に至ったんだった。
 
 韓国産ミュージカルを観たのは、『シャーロック・ホームズ アンダーソン家の秘密』に次ぎ二度目だけれど、なかなか刺激的。これに、噂に聞く『ブラック・メアリーポピンズ』を加えて考えてみると、韓国産ミュージカルの作り方のヒントが見えるね。
(1)世界中でよく知られた(ただし著作権切れで、アレンジが許される)物語を原作とする。
(2)エログロ(特にグロ)の要素を入れ、エピソードをびっしり並べ、飽きさせない展開を作る。
(3)最新の技術を使って、場面転換に時間がかからないよう工夫し、徹底的にムダを省く。
(4)台本と曲は、自前で作る。
ということだわ。
 日本でも作れるよ、もっといいものだって!特に(4)が大事だとマダムは考える。 

速報!浦井ヘンリー五世、再び

 きゃっほー!
 みんな、もう聞いてる?
 新年早々、来年の話なんだけど、2018年5月、新国立劇場で『ヘンリー五世』の上演が決まったよ!!
 主演は勿論、浦井健治その人。やった〜!これまでの鵜山組、続行よ。
 喜びのあまり今、うちで「We will Rock You」かけながらひと踊りして、マダムは、ツイッターのアイコンをヘンリー五世仕様にしたので、ツイッターの方もよろしくね。(ていうか、受験生の母の顔はどこにいったのかしら〜〜〜?)

 ヘンリー四世、観なかった人はもう、後悔してるでしょ?
 そうだよ、シリーズなんだから、見続けると喜び倍増なのよ。
 来年まで、頑張って生きるぞー。

深夜の岡本健一

 スマスマが終了してしまって、マダムはいよいよテレビで見るものがなくなったわ。家族がいなくて一人の時、テレビはほとんど点いていない。CDか、iPadで音楽をかけてる。
 年越しの時も、子供が見ているカウントダウンコンサートの様子を片目でチラ見してたぐらいだったんだけど、そこに岡本健一の姿を発見した時には、眼を普段の2倍くらいの大きさに見開いてしまったよー。
 なんという格好良さ・・・・色っぽーい!
 マダムは岡本健一のアイドル時代、殆ど憶えていない。役者岡本健一となってからのファンだからね。それだって勿論、かっこいいのも色っぽいのも承知してたわ。承知していたのですけれども!
 いや〜、ホントにアイドルだったんだな〜。ギターをしゃくりあげる(?)ような仕草がたまらん。中年になって更に磨きがかかっているね〜、オーラ全開。
 
 その岡本健一の舞台『炎 アンサンディ』が3月に再演される。初演で観なかった方!マダム絶賛のおすすめです。絶対、観るべき。彼だけじゃなくって、出演者全てが素晴らしい。
 実はマダムは見に行かないかもしれないの。私生活的に一番忙しい3月だから。それに初演の印象が脳に焼き付いているので、それを大切にしておこうかな、って・・・(土壇場で気持ち翻るかもしれないけど)。
 でも、観てない方には強制的おすすめします。
 初演のままの演出なら、岡本健一のエアギター姿が見られるかもよ。

『お気に召すまま』追記

 シアタークリエの『お気に召すまま』について、記事内容に言葉が足りてないところがあるようなので、補足するね。

 マダムは演出が気に入らなかったんだけど、「設定を1960年代のアメリカにもっていった」ことそのものが気に入らなかったんじゃないのよ。さらに言えば、その演出が失敗してるから批判してるわけでもないの。そもそも失敗なのか成功なのか判断材料がなさすぎだし。
 それが日本人の観客にどんな効果をもたらすか、演出家がよく考えてないのがありありとわかるので、嫌だったの。

 面白いと思ったから演出家は、その設定を選んだわけでしょう? ならば、日本人の観客に面白さをわかってもらおうと努力をしてほしいのよ。そのためには、自国で演出するのとは違う努力が必要となる。それが他国で演出する、ということなのではないかしら?
 努力したけど失敗してしまってる、というのとは、今回の舞台は違うと感じたわ。
 あのままでアメリカ人は面白さをわかるんだよ、っていうんなら、向こうで上演してるものをそのまま来日させればいいわけなのでね。マダムだって、もしブロードウェイでこういう演出を見たら、別の見方、別の反応ができると思う。

 もしこれがシェイクスピアじゃなくて、三島由紀夫の戯曲だったら、演出家はもっと身構えるでしょう?
 シェイクスピアは自分たちのところが本場だから身構えがいらない、と思っていないかしら? それが嫌なの。そして、依頼する側も、そちらが本場なのでおまかせしますっていう態度があるでしょ?(ミュージカルの時の作曲の依頼とかも、同じ精神構造が感じられるよ。)どっち向いて芝居作ってんの?と思うの。お金払って観てるのは、私たちです。
 
 ちなみに、これは役者さんたちを批判してるんじゃないんです。役者さんたちには全く関係がないこと(というか、どうしようもないこと)だから。
 むしろ、役者さんたちだけは私たち観客の方を向いてくれている、と思う(あたりまえのことといえば、そうなんだけど)。

 あー、またホントのこと、書いちゃったな〜。
 エネルギーがいるんで、大変なのよ、ホントのことを言うのって、ね。

2017年はシェイクスピアで幕開け『お気に召すまま』

 あけましておめでとうございます。
 今年も拙ブログを、どうぞよろしく。
 4月頃までは、私生活上の理由により、観劇数も減る予定で、記事も短めになるかもしれないけど、ご理解下さいね。

 今年の観劇はじめは、やはりシェイクスピアで。1月7日(土)マチネ、シアタークリエ。

『お気に召すまま』
作/ウィリアム・シェイクスピア  翻訳/小田島雄志
演出/マイケル・メイヤー  音楽/トム・キット
出演 柚希礼音 ジュリアン 橋本さとし 横田栄司
   伊礼彼方 芋洗坂係長 マイコ 小野武彦 ほか

 宮廷社会からそれぞれ追放された男女、ロザリンドとオーランドーが、辿り着いたアーデンの森で日々を過ごしながら、互いの気持ちを確かめ合って、ラストに結婚に至ってめでたし、な物語(なんていい加減なまとめでしょう)。
 もちろん、その間には、シェイクスピアの喜劇には付きもののエピソードが満載。女の子が男装して男になりすましたり、そのなりすましに恋人さえも気づかなかったり、女同士の熱い友情があったり、堅物の人が信念が崩れ去って豹変したり、道化が人生を達観してたり。ご都合主義的な大団円がやってきたり。
 でも、今回の演出は、マダムが知ってるシェイクスピアとは、ずいぶん違うものだったの。

 芝居の時代設定をアメリカの1960年代に置き換え、宮廷は当時の政界に、アーデンの森はヒッピーの聖地ヘイトアシュベリー(どこ?)に設定してる。なので最初は、オーランドー(ジュリアン)もその兄オリヴァー(横田栄司)も現代風のスーツ姿だし、ロザリンド(柚希礼音)も従姉妹のシーリア(マイコ)もミニのワンピースに白いストッキングだったりする。そして場面がアーデンの森ならぬヘイトアシュベリーに移動すると、そこに住む住人たちはもちろん、移動してきたロザリンドたちもみんなヒッピー風の衣装になる。セットの色合いもそれに合わせて無機質からカラフルに変わる。
 のだけれど。それで?と、マダムは思ったのだった。こちらは1960年代のアメリカについてあまり意識したことないし。さっきも言ったけれど、ヘイトアシュベリーって台詞で言われたって、「それ、なに?どこ?」っていう感じだし。置き換えたことで起きる化学変化は?ないの?
 芝居が始まってまもなく、マダムの中に「やらかしちゃった」感が生まれたのね。日本(語)を解しない外国人演出家の「?」な演出。あったよねえ、これまでも。シェイクスピアだから、向こうでやってるアイデアのまんまでいいと思ってるでしょう?言葉を翻訳すれば済む話じゃないのよ。言葉の壁は脳の壁。日本の役者は、言葉のみならず、身体も日本語で動いてるのよー。歴史的あるいは政治的常識も全然違うの、考慮してない。トニー賞受賞の演出家だとしても、認めませーん。

 で、ヒッピー風の衣装が最も似合いそうな橋本さとし(ジェークイズなんだけど、せっかくのキーマンが、意味ありげなだけになってた)とか横田栄司が、そっち側じゃないしね。また日本人には着こなしが難しい服なので、舞台上がカッコよくない。みんな着慣れてないし。着せられてます感が漂ってて。(長い髪で、擦り切れたベルボトムのジーンズが似合う日本人、思い当たった。Char!めちゃくちゃカッコイイっす。そこまで到達しろとは言わないけれど。嗚呼。)

 だけどただ一人、どの衣装も着こなし、かっこいい人がいた。柚希礼音、その人。
 マダムは途中から、シェイクスピアであることは忘れることにし、柚希礼音のロザリンド押しで観ることに方針転換した。そうしたらかなり、楽しかったのよ。
 宝塚の男役出身の人が退団後最初にシェイクスピアに出演するのは、よくあることよね?古くは大地真央のヴァイオラとか、最近も音月桂のヴァイオラとか。柚希礼音も同じように、男装してからが面目躍如。(ミニのワンピースの時は、本人のドキドキが伝わってくる気がした。)カッコよくて、生き生きしてて、いろんな反応がヴィヴィッドで、目がキラキラしてて、つい目で追ってしまう魅力的なロザリンドだったわ。(シェイクスピア作品として本来のロザリンド像にかなうものなのかは、よくわからないんだけど。)そしてずうっとベルボトムジーンズ姿の男装だったのが、最後に真っ白なウェディングドレスになって出てくると、客席から一斉にため息が漏れたの。素敵だった〜。
 だからね。ヒロインがなかなか魅力的で、まわりに橋本さとしや横田栄司や小野武彦など百戦錬磨の役者を配しているわけだから、これでオーランドーさえよかったら、トンチンカンな時代設定でも役者の力でもっと面白くできるんじゃないかしら?まだ公演は始まったばかり。オーランドーの奮起を期待するわ。ロザリンドに本気で惚れてくれい。
 
 記事が短めになるかも、って言ったそばから、こんなに長く書いてしまったわ。
 やっぱり書きたいんだわね、本当は。

 
 

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