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2回目の『アルカディア』または翻訳物を観ることの喜びと苦悩について その3

 1回目の時、主役はセプティマス(井上芳雄)だと感じたのだけれど、2回目はもう、そうは思わなかったの。もちろん、キーマンであることに変わりはないのだけれどね。
それはたぶん、井上芳雄だけは始めから演技が出来上がっていたからじゃないかしら。正確に言えば、19世紀組のほうは1回目と2回目とで、あまり変化がなく、現代組の方は、上演しながら変化していき、それで全体のバランスがよくなった結果、誰が主役とかは気にならなくなった、ということかな。

 そのセプティマスの井上芳雄、本当にいい役に巡り合ったね。彼ほどあの19世紀の美しい衣装が似合う人はいないし、女にモテるけど自分からは惚れてないツンデレ感がまたぴったり。欲を言えば、色気がもっとあればね。最後のワルツのシーンも、美しかったけど、足りないものがあったよ。なんていうか、恋には落ちないタイプの男が16歳の少女と踊るうちに恋に落ちた、変化が見たかった。見えた人もいたのかもしれないけど、マダムには見えなかったので。
 ハンナ役の寺島しのぶがすごく良かった。マダムは、彼女が湿った役をやるのが苦手だったので、今回はどうかなと思ったのだけれど、知的で、奥手な、大人の女性を演じて、これほどはまるとはね。とても自然に見えた。嬉しい発見。
 バーナード役の堤真一は、軽い男を楽しそうに演じていたけど、1回目の時はややはしゃぎ過ぎな感があり、2回目少し落ち着いたのがほどよかった。彼のようなベテランでも、「客席から笑いを取る」呪縛からは逃れられないのかしら。
 トマシナの趣里。13歳から16歳を演じて何の違和感もない26歳って、驚き。立ち姿も美しいし。ただ、彼女の台詞もコミカルな方へ引っ張られていたのが惜しかったわ。真面目に真剣に言う方が、もっと面白かったと思うのだけれど。
 伯爵夫人役の神野三鈴は、最近ほんとに凄い。言わずもがなね。
 そしてヴァレンタイン役の浦井健治は、その2でも言った通り、2週間の間に、いちばん変化が大きく、進化していったと思うけれど、始めからそのように演出されていれば、そう出来たはず。もっと細かく要求しても、十分応えたと思うの。頭から湯気が上がるくらい沢山要求するのが、浦井健治にはちょうどいいのよね、たぶん。
 マダムは浦井ファンだけれども、役の大きさは全然問題じゃないと思ってる。そして、彼だけ良くて作品はつまらないなんてことはあり得ないし、作品が素晴らしいのに、彼が良くないってこともないと思ってるの。
 てことは、作品の良さと彼の演技の良さが完全に連動している、ということかしら?そんなこと、言い切っちゃっていいのかしら?
 でも分析すると、そういうことになるよね。
 観終わった後、いっぱい考えさせられる芝居で。一粒で二、三度美味しい芝居でした。
 

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コメント

マダムブログ、待ってました~

私も2回は観たいと思い挑んだのですが人気高で
平日マチネ1日しか取れませんでした。
難解と聞いていたので先にパンフは手に入れ
相関図を頭に入れ「一語一句も聞き漏らすまい。」と
かなりの集中力で観たので私なりには理解したつもりでしたが
やっぱり2回は観たかった作品でした。
お金と時間が許せば、2回3回観れば、回数に比例して
楽しめるのはきっと誰でも思うことで、
とても素敵な舞台だったからこそ
「なんかよく解らなかった。」なんて感想を聞くと
残念で、、、
でもやっぱり1回の観劇の人がほとんどなので1回でもある程度満足出来る
作品作りをお願いしたいものです。

疑問はいくらでも湧いてくるのですが
‘トマシナは自殺だったのでは??’という友人の解釈が有って、、、
私はそこまで思わなかったのですが
①聡明なトマシナがロウソクの火を消し忘れるなんて、、
②他の人と結婚させられそうになっていてワルツを踊ってと
  ねだるとき「世界が終る前に~」みたいなセリフを言っていたので、、、
とのこと。
私はセリフの部分は曖昧で、そこまでの絶望感が
あったとは思えなかったのですが
何回か観るとそう思えてくるのかな~と。
でも聡明なトマシナだからこそ、そう考えたくない思いも強いです。
こうやっていろいろ疑問を残すお芝居は悔しいけどいつまでも
印象に残るものですよね。ほんと、一粒で二三度美味しい。

浦井君は本当に1つの作品の中でもどんどん進化しますよね。
時には体型も(笑)
だから目が離せないです(^^♪

ホワイトさま、こんにちは。
トマシナの自殺に関しては、全く思いつきませんでした。あの利発さは自殺に結びつかない気がしますが。どうでしょう?
私は、自室で、セプティマスが来てくれるのをずっと待っていて、ロウソクを消さずにいた、そして消さずに寝落ちしてしまった・・・と解釈しました。
でも、真相はあきらかでないので、どう想像しても自由ですよね。
中身の濃い芝居でしたので、もっともっと、味わえたんじゃないか?と思ってしまいます。
それでも、7ヶ月ぶりに浦井くんが舞台に戻ってきてくれて、すごく安心しました。よかったあ。

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