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愛する「海街」が映画になって

 吉田秋生の「海街diary」が映画となったので、観てきたわ。普段、映画のことは書かないけど、これだけは取り上げないとね。これから観る人は、観てから読んで。

『海街diary』
原作/吉田秋生
脚本・監督/是枝裕和
出演 綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すず
   加瀬亮 リリー・フランキー 大竹しのぶ 樹木希林
   風吹ジュン 堤真一 ほか

 えっとね。なかなか良かったです。1本の映画として。原作ファンとしてはいろいろ言いたくなっちゃうけど、それはあとで少しね。1本の映画として愛せる映画だったわ。
 なんていうか。マダムが思い出したのは、市川崑監督の『細雪』。あれは昔の船場の四姉妹のお話だったけど、映画「海街」は、現代の「鎌倉版細雪」として作られてると言える。美しい街の、四季折々のエピソード。桜や紅葉や緑や海の輝き。美しい四姉妹の、エピソードにふさわしい衣装(普段着、喪服、浴衣、職場や学校の制服)も見どころなの。まあ、少し美しすぎるかな、四姉妹。アレじゃ、鎌倉中で有名になっちゃうよ、美人姉妹ってことで。ホントはもう少し普通な人たちなんだけどな。
 舞台が鎌倉なので、小津映画と比べる向きもあるようだけど、マダムは全然小津を思い出さなかった。だって、小津は、風景に感情移入させるような手は使わないもん。だから、小津じゃなくて、『細雪』なのよ。
 もの凄く豪華で、手堅いキャスティングなので、下手な人などいない。そこはなるほど、と思ったけど、この映画の演技で圧巻なのは、すず役の広瀬すずと、大叔母役の樹木希林だった。もう、凄いのー、この二人。演技のベクトルが真逆なんだけど、到達点が同じくらい高い。
 広瀬すずは、自分と演技の境目が無くなる憑依型。狙ってなのか、監督は台本を彼女にだけ渡さず、その場その場で口立てで台詞を伝えて、撮影していったらしい。
 一方の樹木希林。出番は2、3シーンなんだけれど、大叔母さんそのものとして存在してた。彼女は憑依してるわけじゃなく、長年の経験があった上での冷静な計算があって演技してるわけなので、さすがとしか言いようがないわ。
 原作マンガをおのれの掌のようによく知っちゃってるマダムは、映画を見ながら、あ、ここはあの台詞、あ、ここは是枝監督のオリジナル、あ、ここはこう変えたんだー、などと気が散ること甚だしかった。でも、すずと大叔母さんの出てくるシーンは、そんなこと忘れて、見入ったの。
 そのほかの役者たちは、皆上手いし、手練の人たちばかり。でも、だからこそなのか、予定通りな演技なの。悪く言えば予定調和。それで原作との違いばかりが気になってしまうんだった。
 四姉妹のキャスティングだけで言えば、長澤まさみのよっちゃんは大健闘で、夏帆のちかちゃんもマンガとは別物だけどOKであったわ。ただ綾瀬はるかのシャチねえだけは、もう全然違う人になっちゃってた。キャスティングの時点での、監督の考えが、マダムとは180度違ったんだわ。
 
 原作はまだ連載中だし、2時間の映画にするとき取捨選択があるのが当然なので、別物として考えなきゃね、といつも自分に言い聞かせてる。でも別物でも、原作のどこをキャッチしたかは大事でしょ? 
 不在の親との関係が、この物語の鍵だと思うの。父親の不在については、ちゃんと語られているけれど、母親の不在については監督の意識が薄いような気がする。だから、母の演技は大竹しのぶにお任せしちゃったのかなあ。どうも腑に落ちなかったのよ。母と娘の関係は、シャチねえの性格の一部を作ってるのにね。
 吉田秋生の作品を愛する女性ファンと、映画を作る男性監督の間には、越えられない深い河が存在するね、きっと。
 四半世紀前の『桜の園』映画化の時から、河は変わらず深いままなのかも。

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コメント

マダム様

海街、ご覧になったんですね。
私は行こうと思いつつ、まだ行けていなくて・・・どうせそのうちテレビで放映するだろうしなあとかも思ってて・・・外出しづらい身なのでぐだぐだしてるうちに間に合わなくなりそうです(^_^;)

テレビでいっぱいcmを見てるうちに私もあのキャストはあれでありなんだと思えるようになってしまいました。ただマダムの仰るように綾瀬はるかだけはやっぱり納得がいかないです。でも小劇場演劇と商業演劇がさいしょっから全く違うものとしてつくられるようにあの映画はあのキャストでしかやれなかったんだろうなと今は思ってます。

余談ですが、梅の甘露煮作ってみました。
本当にコンロにつきっきりで立ちっぱなしで腰が痛くなりました。
苦労した割にアクの抜き方が不完全だったらしくいまいちの出来栄えでした(泣)

むくるりさま。

テレビでのCM量が凄かったですね。
これまでの是枝監督とは、もう立場が違うんだな、と感じました。メインストリームにいる人になったんですね。
だから、おっしゃるように、あのキャスティングはなるべくしてなった大作映画のキャスティングだったってことです。
たとえイメージと違うキャスティングでも、映画の満足が得られたらいいのだ、と思って観に行きました。
結果は、まあまあで。
でも、マンガを読んで、4人が美人姉妹であるとは私はとらえませんでした。そこが、監督との決定的な違いでしたね。

ものすごく大好きな原作なので…。
ちょっと今回は見に行けませんでした…。
好きだから、行くべきかとは思ったんですが…。
おっしゃっている通り、私は、綾瀬はるかちゃんは好きですが、サチ姉とはイメージが違いすぎたんです…。

ちかさま。
観てもやはり、シャチ姉の造形はあまりに違っていました。
あと、母親の造形が全然違うのです。
大竹しのぶの母親は、いかにも男好きで、女を全面に出していて、自由奔放な感じなんです。
でも、原作の母親は、誰かにいつも依存していないと生きられない不自由な女性でしょう?
シャチ姉は、そこが許せなくて嫌いなわけで。
なんかね、わかってないなー、是枝監督。と思ってしまいましたね。
でも、いろいろと見どころはある映画でしたので、テレビ放映時にはどうぞ。

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