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井上芳雄オンステージ『二都物語』 その2

 その1に引き続き、ネタバレ満載なので、これから観る人は注意してね。

 

 タイトルにもつけたとおり、『二都物語』は井上芳雄オンステージそのもの。だって、ほとんど全部の場面が、カートンのためにあったようなものだったんだもの。
 正直に白状しちゃうけどね、マダムは何十年も忘れていた感情が呼び覚まされて、心かき乱れた〜。そう。好きな人に別に好きな相手がいることがわかり、その相手がとてもいい人だったりするときの、あの胸の痛み。そういうのってあまりに苦しいから、忘れてた方が楽だったんだけど、井上カートンのせつない様子が、マダムの感情を掘り起こしてしまったの。
 ルーシーに打ち明けたとたん、「ダーニーに今、結婚を申し込まれて、はいと言ってしまった」と言われ、それを当然のこととして受け入れるカートン。
 ダーニーとルーシーの間に子供が生まれ、すくすくと育っていくのを見守るカートン。
 ダーニーが捕まって、絶望し、夢の中でダーニーを呼ぶルーシー。その声を聞いて、ただ立ちすくむカートン。
 こうやって思い出すだけで、あー、胸が苦しー・・・凄いよ、井上カートン。立っているだけで、表情や、肩や背中で、心の内を表現してる。カートンという役が、井上芳雄の中にあった演技の稲妻を引き出したのよ。
 芝居を観る楽しみは、こうやって、心かき乱れたい、普段は忘れている感情を引き出されたい、ってことかもしれないわ。

 カートンが友人の身代わりとなって牢に入り、身代わりのまま断頭台に登っていく結末は、少し冷静に考えたら、受け入れがたいものよね。のだけれど、カートンにとってダーニー一家の幸せは、自分自身の幸せそのものとなっていたから、ああする以外、カートンには選択肢が無かった・・・・と思えるの。そう受け取れるように、始まりからずっとカートンの演技には自然な流れが出来上がっていた。演出家と役者の力だね。
 そうなんだけど、やっぱりこれじゃ『二都物語』じゃなくて『カートン物語』なのよ?
 
 ここまで書いて、ふと気がつくと、この作品がミュージカルだったことを忘れてるわね。
 実はもう、マダムは1曲も憶えていないの・・・・。
 『エリザベート』を観たときは、「最後のダンス」とか「闇が広がる」とか、さびはちゃんと記憶に残り、音楽が苦手なマダムだって口ずさむことが出来たんだけれど。今回はどの曲も難しかったし、なんだか全部トーンが同じように聞こえてしまって。
 それでも井上カートンの歌は思いが載っていて、沁みこんできたよ。
 結局、ミュージカルも、芝居なのよ。歌も踊りも、芝居の一部。芝居心のある歌や、芝居心こもった踊りじゃなくちゃ、いくらいい声で歌ったり、踊りが迫力あったりしても、一時的な楽しみでしかないもん。
 
 井上芳雄VS浦井健治のがっぷりよつの勝負は、持ち越しね。この作品は、井上君の独壇場だったから。
 でもさ、浦井健治ファンであるマダムを、井上芳雄ファンにもしたんだから、この作品にはそれだけの力があったってことよ。(だけど、ミュージカルファンにはなってない。そこはやっぱり、まだまだ。)
 ということでマダムは、浦井君の次回作『MIWA』と、井上君の次回作『イーハトーボの劇列車』を観ることにします。よかったー、観たいものが増えて。 

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コメント

こんばんは。井上君、たまに観ていますが、ストプレも頑張っているし、浦井君とともに次代のミュージカルを引っ張っていく存在になりつつあると思います。そういう意味で、マダム様がファンになられたのも当然かもしれません。ミュージカルが苦手なマダム様がお二人に出会えてよかったですね。

>実はもう、マダムは1曲も憶えていないの・・・・。
市村正親さんが口癖のようにおしゃっているのが、「ミュージカルは曲が良くなくてはいけない。」ということなのです。曲が芝居をさらにパワーアップさせるような、そうでなくてはミュージカルにする意味がないと。
その「曲が良いミュージカル」、これがなかなか、ないというのが現実です。

たかちゃんさま、こんばんは。
観る前にいくつかインタビューを読みましたら、井上君は鵜山仁さん演出であることが凄く嬉しそうだったんですよね。ミュージカルであっても、芝居として演出してほしい、演技をちゃんとやりたいんだ、という彼の気持ちが伝わってきました。
それで、実際、いい演技だったんです〜。
素直にファンになりました。もちろん、歌も聴かせるし。
 
でも、たかちゃんさまがおっしゃる通り、いい歌があるミュージカルは少ないんですね。
ストーリー(テーマ)、歌、ダンス、演技の四拍子が揃うことは、並大抵ではないんですね〜。

Viola-sama
こんにちは。
マダムより1週間早く舞台を見て、井上シドニーにハートを撃ち抜かれました。。。素晴らしかった!!

マダムがおっしゃるように、作品そのものはミュージカルにしては歌が弱く、普通のミュージカルより台詞が多いように感じました。シドニーとルーシー、チャールズの関係ももう少し丁寧に描いて欲しかったけれど、今回は本邦初演だからでしょうか、勢いがありました。2階後方で見たのに、舞台に引き込まれ、満ち足りた気持ちでいっぱいになりました。物語の世界に浸って、思い切り泣いて、悲劇的な結末なのに、信じられないくらい幸せな気持ちになりました。これって、役者の力ですね。

Mickeyさま。
しあわせですよね〜演技の稲妻にハートを打ちぬかれるの。
これぞ、芝居の醍醐味。
「二都物語」は、きっと再演されると思うので、細かい点が修正されることを祈ってます。
そうしたらまた、観に行こうかな。

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