最近の読書

« 『テルマエ・ロマエ』の役者たち | トップページ | いつも心につかこうへい その1 »

『しみじみ日本・乃木大将』でしみじみする

 三ヶ月ぶりのさいたまは、脳が融けそうに暑かった。さいたま芸術劇場、7月14日(土)マチネ。

『しみじみ日本・乃木大将』
作・井上ひさし 演出・蜷川幸雄
出演 風間杜夫 根岸季衣 大石継太
   朝海ひかる 香寿たつき 吉田鋼太郎 ほか

 チラシに書かれたストーリーを読んでも、いったいどんな舞台になるのか見当もつかず、何の予備知識も無く出かけて行ったの。
 今、乃木大将、と聞いてパッとイメージが湧く人って、どの年齢層の人かしら。マダムはね、ホントにおぼろげ。マダムすらおぼろげなんだから、若い人は名前も知らないかもね。ということで、客席はいつもより若干年齢層高めだった。
 それもそのはず、ではある。演目がどうとかより、風間杜夫と蜷川幸雄の初タッグの方に興味津々なのは、マダムだけではなかったと思うわ。
 さぞかし火花散る初タッグと思いきや・・・・なんだかふんわりのどかで、温かな芝居だった。
 
 お話は明治天皇の葬儀の日、その一日の物語。朝、乃木大将(風間杜夫)とその妻静子(根岸季衣)が厩舎に現れ、愛馬たちに手ずからカステラを与え「元気でな」と声をかける。夫妻が立ち去った後、馬たちは前足と後ろ足に分かれて、討議しあう。「ご主人様は明治天皇の後を追って、自害されるおつもりだぞ」「そんなことがあるものか」そして馬たちは、なぜ乃木大将が自害することになるのか、これまでの彼の足跡を、各パートに分かれて演じてみせる。その芝居が終わる頃、日も暮れて葬儀の終わりを告げる大砲が轟くと、乃木邸内では本当に夫妻が自害し、馬たちは愕然として邸の方を見つめるばかりだった・・・。
 というストーリー。肝はなんと言っても、馬たちが演じる乃木大将の半生。明治を代表する軍人として名高い割には、西南戦争では軍旗を奪われるという失態があったり、弟や師が敵方についてしまい、面目丸つぶれだったりする。日露戦争では旅順で勝ったものの沢山の兵士を死なせてしまい、あまりの情けなさに自害しようとして明治天皇に止められたりする。二人の息子にも戦死という形で先立たれるけれど、世間からはその同情のおかげで、軍人としての汚名をそそぐ形になる。愛すべき人柄だったのかもしれないけど、軍人としてはどうだったのかしらね・・・と思われちゃう半生なの。それがすべて笑いを交えて説明されていくわけ。
 いくつものエピソードをほぼ全員ベテランと言ってもいい役者たちがテンポよく演じていく。誰にも感情移入できないところがちょっと辛いところだけれど、各シーンが工夫されてて、飽きないの。一番可笑しいのは、香寿たつきの山県有朋と朝海ひかるの児玉源太郎が、宝塚男役バージョンで演ずる権謀術策シーン。異常にキラキラした軍服が似合って(当然)、凄く可笑しい。
 なので、とても楽しく観たんだけれど、最近の蜷川演出はこんなふうに楽しいものが多くて、逆に不安になるマダム。かつての、油断してるといきなり匕首が突きつけられてるような切れ味が無くなってきてるような気がして。まさかとは思うけれど、丸くなったりしてないよね??蜷川幸雄。
 
 
 芝居の内容とはまったく関係ないんだけれど、マダムには感慨ひとしおの日だったわ。四半世紀以上前、マダムは芝居の世界にのめり込み、あらゆるジャンルに首を突っ込んだけれど、そのとき本当にマダムの心をつかんで今も揺るがないのは、二種類の芝居。それは、つかこうへいとシェイクスピアなの。
 こう並べて書くとわかるけど、同じ芝居とはいえあまりにもジャンルが違う。テイストが違う。二つとも大好きだけど、二つに対し自分の心の中の別の面が向いている感じ。誤解を恐れずにいうと、全然違うタイプの二人の男性と同時につきあってるみたいな。
 だから片方を代表する風間杜夫と、もう片方を代表する吉田鋼太郎が、おなじ舞台に立っているのを目の当たりにして、凄く凄ーく不思議な感覚に囚われたわ。最初はなんだかくらくらした。なぜ、この二人が同じ場所に?これは本当に起こっていることなのかしら・・・って。
 長く生きてると、生きてるだけのことはあるんだわね。よかった。
 
 

« 『テルマエ・ロマエ』の役者たち | トップページ | いつも心につかこうへい その1 »

吉田鋼太郎」カテゴリの記事

芝居レビュー 」カテゴリの記事

蜷川幸雄」カテゴリの記事

風間杜夫」カテゴリの記事

コメント

マダム ヴァイオラ様

初めてコメントします。いつも楽しく拝読しています。

7月16日(月)のマチネを観ました。暑かったです~。
宝塚シーンもおもしろかったけれど、私が一番笑ったのは、吉田鋼太郎が次の間で
風間杜夫の乃木大将の言葉を書き取るところです。吉田鋼太郎、がんばっていましたね!

風間杜夫と根岸季衣が徹子の部屋に出演したのですが、蜷川幸雄は
「俺は下手な奴は怒るけど、上手い役者には優しいんだ。」と言っていたそうです。
最初から役者たちはセリフが入っていて、蜷川幸雄がびっくりしたそうです。

ciel


cielさま、こんにちは。

今回は風間杜夫、根岸とし江を始めとしてベテラン揃いですものね、ニナガワさんとしてもあまり怒る要素がなかったのかもしれません。
ただ、この本でなかったら・・・もう少しバトルがあったかも、ですね。

マダム ヴァイオラさま

こんにちは。
蜷川演出で風間杜夫と吉田鋼太郎、いてもたってもいられず。
少し苦手な劇場でしたが足を運びました。
どのシーンも面白おかしく。風間杜夫と吉田鋼太郎の声が交互に聞える愉快さも体験できて喜んでいたのですが。
途中で大石継太にハッとさせられたんです。
風間杜夫と吉田鋼太郎の間に立っていたのですが、彼にしか目がいかない瞬間というものがありました。呼吸の同調をしたのか・・・。初めての感覚で驚きました。
そして素晴らしいと感じました大石継太!!!
シンベリンのときには気に入った程度だったのですが、今回のことがあって惚れ込んでしまいました(笑)
そしてやっぱり演劇は劇場に足を運んで、生声で、体感するのが1番だと再認識させられた観劇となりました。

Doshirouさま、こんにちはー。

そうなんです。風間・吉田両巨頭の間にあって、何気なく凄い大石継太!
何でもやれちゃうんですよ、彼は。今回の明治天皇は圧巻でしたね。
マダムもだいぶ前から大石継太のファンですう。

そうそう、秋以降に、風間杜夫×加藤健一の芝居があります(加藤健一事務所主催です)。大阪も行くかも、です。見逃したらダメよ。アンテナはっててね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 『テルマエ・ロマエ』の役者たち | トップページ | いつも心につかこうへい その1 »

2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

関係するCD・DVD

無料ブログはココログ