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『時計じかけのオレンジ』を観る

 ひょんなことからチケットを友人から譲られて急遽観ることになった。小栗旬の久しぶりの舞台、期待と不安(だって、パンクオペラって何?)を胸に抱えて向かったの。1月29日(土)マチネ、赤坂ACTシアター。

『時計じかけのオレンジ』
作 アントニー・バージェス 上演台本・演出 河原雅彦
出演 小栗旬 武田真治 キムラ緑子
   橋本さとし 吉田鋼太郎 ほか

 いろんな雰囲気の小栗旬を観られて、楽しいと言えば楽しく、立ち見まで出て超満員のACTシアターのかなりの観客が満足そうだった。小栗旬自身も主役の自覚が凄くあって、サービス精神旺盛だった。休憩時間を含めた2時間40分出突っ張り。
 主役以外もなかなか贅沢な配役で、ベテラン陣はさすがの演技だったわ。武田真治、キムラ緑子、橋本さとし、そして吉田鋼太郎。皆、台詞がちゃんとこちらに届く。マイクなんか必要ないのよ。我が吉田鋼太郎の歌は、とりたてて感心はしなかったけれど、台詞部門では抜きん出ていて。英語の台詞はご愛嬌だけど、発音も押韻のリズムもちゃんと本物。こんなところで冗談のように披露するのはもったいないくらい。
 パンクオペラとうたっている以上はミュージカルなんだよね? でも歌でマダムの心に響いたのは一曲のみ。妻を殺された作家アレックスが歌う嘆きの歌。武田真治が素晴らしかったの。マダムは武田真治の舞台を観るのは初めてだったんだけど、この何処までも戯画化された舞台の中で、役に命を吹き込めた人は彼だけだったのかもしれない。(それはつまり人間らしい役が彼の役しかない、とも言えるね。)他の歌はなんだかみんな説明的な歌で、心情を歌う歌は作家アレックスの歌だけだったしね。
 マダムは最近武田真治のインタビューをネットで見たんだけど、その中に彼の初舞台の『身毒丸』の映像が一瞬だけ流れてね。その一瞬が、とてもとても魅力的だったの。その時から随分と時が経ち、紆余曲折をへて、今、彼は役に真っすぐに取り組む。今回の『時計じかけのオレンジ』のなかで、彼ほど真摯に舞台を務めた人はいなかったのではないか、とさえマダムは思ったわ。

 役者についてはさておき、作品自体について話そうじゃないの。

 

古っ!。アナクロっ! それがマダムの正直な感想よ。
 マダムはほんの子供の頃にキューブリックの映画を観てて(といっても怖くてほとんど目をつぶってたのでよく知らないのと同じね)、原作は知らない。キューブリックの映画は当時凄く物議をかもした問題作で、1971年公開。原作は1962年に発表されている。
 つまりどっちにしろこの原作は4、50年たっているの。当時、十分すぎるほどセンセーショナルなものだったわけだけど、それにはちゃんとその時代背景というものがある訳でしょ。今、これを日本でやるにはどういう切り口でやったらいいのか、もうちょっと突っ込んで考えてからやらないと、さ。世界からほとんど共産主義は消え去り、若者のエネルギーの暴発どころか、草食男子なんだよ、昨今の若者は!
 この古色蒼然たるテーマをどんなに今風のLEDパネルで彩ってみたところで、古臭さは消えはしないの。だけど、50年前をしっかり再現してやる、という立ち向かい方だってあったのに、そこは逃げてしまっていて。この話は一体いつなのか、何処なのか、どんな設定なのか、きちんと説明しないので、テーマの古臭さすらちゃんと伝わらない。情けない。
 第一、観客は原作どころか、映画があったことすらほとんど知らない世代でしょう? それなのに芝居のあちこちに、「これは原作にない」とかって思わせぶりな台詞をバラまいても、全く意味が無いわ。予備知識のない観客に、初めてお話を語らねばならないという覚悟が全然感じられず、内輪だけで納得している。妙なところで笑いを取ろうとするのも、このテーマに正面から向かうのにテレちゃってることの現れ。あちこちで、台詞のあとに「なんちゃって」を入れてる演出家の姿勢が見える。
 結局この古いテーマの作品をどう料理するか、ホントの方針を決めることができずに演出しちゃった、ってことなんだね。

 小栗旬ファンの若い女の子たちは騙せても、マダムを騙すことはできないのよ。
 役者は、いいホンで、いい演出を受けて初めて輝く。どんなに力があっても、いい演出がなければ、演技の稲妻は出ないの。
 小栗旬の稲妻は、不発だった。でもそれは、彼のせいではない。

 

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コメント

言いたいことを、すっきりとまとめていただき、溜飲が下がる思いです。
私は「映画版は、原作は」と舞台上で説明してくれるのは、分かり易くて良かったんですけどね。いささか楽屋オチが過剰だったのも事実。

おそらくこの舞台は「小栗旬に何かやらせるなら」という企画ありきな話だったんでしょうね。だから、問題意識が希薄。その上、演出の河原さんは、がむしゃらに物事に取り組む〜というよりは、ゆっる〜い感じでふわふわと物事周辺を包む〜のが持ち味な人ですから、二重の意味で、なんだか焦点がぼやけた、ただの小栗旬ショーになっちゃった感じですね。

個人的には、マダムと同じく武田真治君に一票ですけれど・・・・あ!余談ですが、亜門版の『スウイニー・トッド』に武田真治君も出ていて(今度も出ます)これが、けっこう良かったので、彼を見直したことがあります。『エリザベート』のトートは未見ですが。

ぷらむさま。

ぷらむさまは映画をよく憶えていらっしゃるんですね? マダムは怖かったことしか憶えてなくて、だから今回の舞台が初見といってもいい状態だったんです。それで、正直、何がなんやらよくわからなかった。
一番わからなかったのは、ラストです。
自由に選び取って、暴力をやめて、めでたし、って言う意味でしょうかね、あれは? 人を殺しちゃったあとに?

小栗旬ファンの気持ちに水をさしたくなかったのですが、制作サイドに対して、なめんなよ、と言いたくなって、ついついキツいことを書いてしまいました。関係者が記事を読んでくれることを期待します。

マダム様、私の今年初芝居がこれで、がっくりしてたので、今回のもやもやを言って下さり嬉しいです。
面白かったけど、なんだかなーだったのです。


でもでも私はロック大好きだったので、
この映画がだいすきでした(笑)
ラストはこの舞台程、間抜けな感じではなかったけれど、アレックス元に戻って良かったぜ!という感じです。
でもミルクバーの場面がもの凄くアートで素敵なのに
今回はぼやけてました。
もうジャズ喫茶やロック喫茶のような悪場所もないですからねー
それと1つ自慢を!
30年近く前のロンドン公演を見ているんですよ。
もっとレイプも乞食へのリンチも暴力的でぞっとし、
なのに暗くアートな芝居でした。
文明批判もたっぷりで刺激的な舞台でした。
あーーー消化不良です。

間違えました!
ロンドン公演は30年前ではなく、
1990年5月でした。
RSCのプロダクションで、
余りにバイオレンスな芝居で、
絶対に暴力反対、と心に誓った芝居でした。


スレ違いですが、今日の朝日新聞の文化欄にNHKが舞台中継の放送をやめるという記事が載っていたそうです。芸術劇場、「ミッドナイトステージ」は、いずれも廃止になり、「ハイビジョンステージ」は放送枠は残るものの、基本的に国内で上演される作品は放送しない方向性だとか。

NHKの公共放送としての役割はどうなるのだと怒りがこみあげてきて、もちろん、NHKには廃止反対の意見を電話するか、メールするつもりですが。

かおりママさま。
そうです、何を描くのが目的なのか、ちゃんと演出方針が明確なら、暴力シーンもあっていいんです(好きじゃないけど。)。
今回のは、ナマで小栗旬を観るためだけの芝居になっちゃってて。知的な刺激が無くて、寂しい限りでしたねえ。

たかちゃんさま!
ホ、ホントですか?
ちょっと調べてみます。それで当ブログからもNHKへの抗議を呼びかけるかもしれません。

マダム ヴァイオラ…こんばんわpaper
大阪のけいです。
時計じかけのオレンジ評…しかと拝見しました。 来週の大阪で この眼で観てきますね。
私は山内圭哉さんも大好きで 今回も楽しみにしています。その山内さんのblogに原作者バージェス氏の妻は米兵にレイプされのちに自殺されたというエピソードがあって…最終章は観方を限定しないとありました。因みに彼は原作戯曲の最終章を詠み、そんなアホな!とプッと笑ってしまったそうです。
私はどんな気持ちになるのか 今から楽しみでドキドキします。ではまた…

おはようございます。昨日の朝日の記事はここで読めます。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201102010105.html

BSが1チャンネル減少するにしても、BShiとBS2はBShiでやったものをBS2で再放送するなど、再放送枠も多く、シアター中継をそこまで減らす必要はないはずなのに。若者迎合、視聴率優先、商売優先の最近のNHK体質そのものが表れていますね。

こんばんは。シアターリーグのHPに「4月の編成が決まるのは2月20日頃と予想されます。視聴者の意見により、見直される余地は残されていると思いたいところです。」と書かれいます。やはりNHKに要望しないといけないようですね。

http://www.moon-light.ne.jp/news/2011/02/nhk-engeki.html

NHKのこと。
とりあえず、みんなでこちらに意見を!ということです。

http://www.nhk.or.jp/css/?from=tp_af91

定型のお返事が帰って来ても、めげずに意見を出し続けてくださいとのこと。

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