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至福のNINAGAWA『十二夜』

 蜷川幸雄に「今まで一番キャスティングがうまくいったのは、どの舞台ですか?」と尋ねたところで、そんなこと、現役の演出家が答える訳がない。
 でもきっと、この『十二夜』に関しては心から満足だったんではないかしら。主演の尾上菊五郎・菊之助親子から端役の一人一人に至るまで、全員が芸達者ばかり。衣装や装置も予算かけ放題。しかも伝統の中から出てくる知恵が、演技を豊かにする。演出家としてこれほど楽しいことはなかったんじゃない?
 マダムは、今年見た芝居の中で、このNINAGAWA『十二夜』を文句なしに一番の舞台に挙げる。といっても今年実際に劇場に足を運べた回数はごくわずか。しかもこの七月の公演は二年ぶりの再演。それで一番を云々するのはちょっと恥ずかしいけれど、たとえもっとたくさんの舞台を見たとしてもこの一位は動かなかったような気がする。何年かに一本の素晴らしい舞台だったよ。
 マダムは今までに『十二夜』を、違う演出や違うキャスティングで十回くらいは観ているの。その中でも最も面白い『十二夜』だったんだ。
 歌舞伎ファンも驚くような美しい舞台だったことはもちろんなんだけど、何より感動したのはね、まるでシェイクスピアが菊之助のために書き下ろしたかのような、舞台だったから。
 シェイクスピアは劇団の座付き作者だったから、きっと菊之助のような若くて美しい、男も女も演じられる役者のために、このヴァイオラ役を書いたのよ。そして現代、男から女へ、女から男へ、衣装の早変わりも演技の変化も自由自在な役者は世界広しといえども、歌舞伎界にいるだけなんじゃない?ヴァイオラの役をまるで自分のために書かれた役のように演じきった菊之助の存在は、奇跡のようだった。彼のヴァイオラを観た後では、普通の女優のヴァイオラに耐えられるかしら、とさえ思える。
 菊之助だけじゃない。菊五郎のマルボーリオも、中村時蔵のオリヴィアも、これまでの中で一番のマルボーリオとオリヴィアだったし。それに市川亀治郎のマライア!上手くて楽しくて目が釘付けよ。マライアから武田晴信までやれちゃう役者って、想像を絶してるわ。
 来年は名実共に有閑マダムになりきって、至福を求めて劇場へ通うことを誓います。
 では皆様、良いお年を。

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