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ミュージカル俳優浦井健治ファンのための『天保十二年のシェイクスピア』予習講座 その4

 さてここまで大雑把なあらすじを書いてきたけど、これ以上細かく書くと観劇の楽しみが減るので、この辺にしておきます。
 予習しとくと、より楽しいポイントを、も一度まとめてみると、
 
1.「リア王」の設定(王様と娘が三人)と、最初の場面。
2.「ハムレット」の設定と、人物の関係図と、
   幾つかの有名場面(父親の幽霊と会うところ、
   オフィーリアに「尼寺へ行け」というところ、「生か死か」と悩むところ)

3.「ロミオとジュリエット」の設定と、バルコニーの場面。
4.「オセロー」がどんな風に、イヤーゴに陥れられたか、について。
5.「ジュリアス・シーザー」のアントニーの演説シーン。
6.「マクベス」の魔女の予言。マクベス夫人がマクベスをけしかける場面。
 
 こんな感じかなぁ。初日までまだ3週間くらいあるし、あせらず行きましょう。
 ま、予習しなくたって、芝居は楽しいと思うけど!
 
 
 
 最後に、浦井ファンの方に、マダムがいちばん楽しみにしているポイントをお話しして終わりにしよう。
 ハムレットのセリフで「生か死か、それが問題だ」という有名なセリフがあるけど、これは明治以来、たくさんの違う翻訳があるの。芝居の途中、王次がそれを全部(明治の坪内逍遥訳から、最近の松岡和子訳まで)紹介してくれるシーンがある。それが、メッチャ楽しみ。
 
 ではこれで、勝手な予習講座、終了。
 芝居を観たら、レビューを書くので、また読みに来てね。そして、ここで触れなかったパロディを発見したら、教えて下さい!

ミュージカル俳優浦井健治ファンのための『天保十二年のシェイクスピア』予習講座 その3

 すごい反響なので、俄然書く気が湧いてきてる!
 
 続き。

 シェイクスピア好きなら知っているんだけど、シェイクスピアにはよく双子が出てくる。当時のシェイクスピアの劇団には、双子の役者もしくは凄くよく似た二人組がいたのかもしれない。だから、そっくりな兄弟が別れ別れになっていて、知らずに同じ町に滞在し、周りの人間が間違えて大混乱に陥る…という楽しい設定が、よく使われているの。
 なので、井上ひさしももちろん、この設定をそのまま取り入れている。

 物語の始まりで、父親に勘当された三女のお光
 お光は実は、拾われた子で、十兵衛の本当の子ではない。末っ子が継子(ままこ)で、一番気立てがいいというのは、シンデレラとかでも出てくる設定だけど、そこにさらに、お光には双子の姉妹がいた、という設定が加わるの。これを一人の役者(今回は唯月ふうか)がやるので、当然早替わりなんかがあって、楽しいのよ。
 勘当されたお光は遠い町に行っていたけど、父親が死んだと聞いて、姉たちに復讐しようと帰ってくる。姉の息子である王次は、お光にとっては仇の一員なんだけど、互いに一目惚れで、恋に落ちる。つまりここでは、王次とお光は、ロミジュリになる。お光は窓辺で「王次、どうしてあんたは王次なの?(ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?)」とつぶやく。それに対し王次がなんと答えるかは、劇場でのお楽しみ! みんな、その瞬間を待とう。
 
 三世次の悪巧みは、両家の抗争を激化させ、話が進めば進むほど、登場人物はどんどん死んでいくの。作家が決めたことなのでしょうがない。最後は三世次も、語り手の隊長も、み〜んな死んで、全員で楽しく歌う。その歌詞が絶品。「もしも、シェイクスピアがいなかったら」という歌。もしもシェイクスピアがいなかったら、劇場主も役者も英文学者も商売上がったりだよ〜っていう歌、めっちゃ楽しいよ!
 


 歌について話すのを忘れていた!
 出てくる歌出てくる歌、歌詞が韻を踏んでたり、キツいジョーク飛ばしてたり、ちょっと下品だったりするので、普段の自分の品の良さを忘れて楽しみましょう。
 もともとシェイクスピアは、韻を踏んでたり、同音異義語を使って冗談言ったり風刺を込めたり、隠語で下品な笑いがあったりするのね。でも、そういうところを翻訳するのはすごく難しいことなので、日本でシェイクスピアを上演すると、なんかお堅い高尚なものになりがち。
 井上ひさしはその辺りのことをよくわかってて、歌詞の中に言葉遊びをたっぷり入れてる。「賭場の場のボサノバ」とかね、上手すぎる。全部は聞き取れないので、見終わってから、興味のある方は、本を読んで更に笑うのがいいと思う。
 
 さて、その4でまとめ、します。

ミュージカル俳優浦井健治ファンのための『天保十二年のシェイクスピア』予習講座 その2

 『天保十二年のシェイクスピア』には、芝居の案内人みたいな人がいて、隊長という役名がついている。今回この役をやるのが木場勝己なの。2005年の蜷川演出版でも、同じ役をやった大ベテラン。良い声で、セリフがまろやかでなめらか。とっても聴きやすい。この人が案内人なので、みんな、安心していいと思う。
 なので、予習しなくてもいいや、と思ったら、ここからは読まなくてもいいんだけど。
 


 ここから解説付きあらすじです(いちばん大事なところのネタバレは避けます)。
 
 清滝村、という田舎町を牛耳っているヤクザの親分、鰤(ぶり)の十兵衛には3人の娘がいる。十兵衛は、娘の誰かに跡目を譲って隠居したいと考えて、娘たちを集め、誰が一番親孝行をしてくれるか?と尋ねる。長女のお文も、次女のお里も、歯の浮くようなお世辞を言うんだけど、三女のお光はまっすぐな気性が邪魔をして、お世辞が言えず、父親の怒りを買って、追い出される。
 これは完全に「リア王」の出だし。全く同じと言っていいので、時間のある方は、「リア王」の最初の5分の1くらい、読んでみてね。時間のない方は、ざっとあらすじを知っておこう。
 そのあと、十兵衛は長女からも次女からも冷たくあしらわれ、町はお文の一家とお里の一家に支配され、二分され、対立抗争が始まる。
 
 抗争が始まった清滝村に、一人の流れ者がやってくる。佐渡の三世次。せむしで足を引きずって歩く醜い男だけど、出世欲が強くて、悪賢い。この設定は「リチャード三世」そのもの。この三世次、醜くて悪いやつなんだけど、口の上手さだけで人の心を操ってのし上がっていくのが、なんとも痛快で魅力的。悪の魅力。
 マダムはもちろん高橋一生、大好きなんですけど、彼が演じてきた中でも最大の面白い役。期待しちゃう。
 三世次は、対立するヤクザの家の両方にうまく取り入って、両方が互いを殺し合い、両方の力が弱まるように、立ち回る。そのあたり、シェイクスピアというよりも、黒澤明監督の「用心棒」みたい。
 だけど、そのうまく立ち回るノウハウが、いちいちシェイクスピアなのよ。
 
 
 たとえば①。三世次は、王次が「父親を殺したのは叔父だ」と気づくきっかけを仕込む。父親の幽霊を仕込むんだけど、それは言わずと知れた「ハムレット」のパロディ。
 
 たとえば②。三世次は、幕兵衛に「愛人が自分を裏切っている」と思い込ませるんだけど、そのやり方はイヤーゴがオセローを罠にかけたやり口(オセローが妻デズデモーナにプレゼントした特別なハンカチを盗んで、別の男の部屋にこっそり置いておく。それでデズデモーナが浮気したかのように見せかけ、オセローの嫉妬をあおる)。
 
 たとえば③。自分の兄貴分を追い落とすため、三世次は「ほめ殺し演説」をする。この演説が「ジュリアス・シーザー」の中のアントニーの演説そっくりなの。(ブルータスのことを褒めてるような口ぶりで、実際は反感をあおり、聴衆はみんなブルータスを信用しなくなる。とても有名な演説。)
 
 というように、三世次の一挙手一投足に、シェイクスピアが練り込まれてるの。マダムも到底全部は気づけないほど、たくさん練り込まれてて、ひとつひとつ発見していくのが楽しい。
 ただそればかりにとらわれると、頭が忙しくなっちゃって疲れることもあるので、ほどほどに。とりあえず上の三つくらいフォローしとけばいいと思うので、なんとなく頭に入れといてください。深掘りしたい方は各自で。
 

 それから占いの老婆が、三世次や幕兵衛にいろんな予言をする。
 浦井ファンの方は、メタマク見てるから、もう当然気づくでしょう。この占いの老婆は、マクベスの魔女です。相手の心の中の本音をくすぐって、泥沼に引き込む悪魔ね。
 悪の塊のような三世次でも、魔女の予言には逆らえない。
 
 あらすじは、その3で、まだまだ続きます。

速報 10月に『リチャード二世』上演

 予習講座中に、すごいニュースが飛び込んできた!
 10月に新国立劇場で鵜山演出『リチャード二世』を上演するって!
 
 2018年5月に、一連のヘンリーシリーズの最後とも言える『ヘンリー五世』上演があったときマダムは既に、同じ座組で『リチャード二世』を上演してくれ、と訴えていたの(レビューは、これで終わりとは思いたくない 鵜山演出『ヘンリー五世』 )。なんと、アンケートに書くように、みんなに呼びかけている…。
 みんなの協力が功を奏したのか、今回『リチャード二世』上演の運びとなったわ〜‼︎‼︎
 めでたい〜!

 出演は、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子をはじめ、シェイクスピア歴史劇シリーズに出演してきたチーム、集合ね。文学座からも、文学座を代表する顔ぶれ(横田栄司、浅野雅博、石橋徹郎、亀田佳明など)が続々集合。
 配役は発表になってないけれど、岡本健一がリチャード二世、浦井健治がリチャードを倒すボーリンブルック(のちのヘンリー四世)を演じるのに間違いないでしょう。
 
 それと、今回の上演にあたって、過去の歴史劇シリーズの映像を公開する、とのこと。選りすぐりの、って話なので全部じゃないみたいだけど、ケチってないで全部公開しなさーい。国立劇場で製作したものは、みんなの財産なんだからねー。
 
 というわけで、夏にはまた当ブログで『リチャード二世』予習講座、開催決定!
 みんな、楽しみにしててね。
 さて、『天保』予習講座執筆に戻りまする。

ミュージカル俳優浦井健治ファンのための『天保十二年のシェイクスピア』予習講座 その1

 2月に日生劇場で上演される『天保十二年のシェイクスピア』。
 浦井ファンの中には、ふだんのミュージカルのラインナップと違う雰囲気のチラシを見て、驚いてる方もいると思うので、その方たちのため、ごく簡単な予習講座します。
 井上ひさし作の舞台を多々ご覧になってる方は、あたりまえすぎて面白くないと思うので、読み飛ばしてね。
 
 『天保十二年のシェイクスピア』は、劇作家井上ひさしの傑作の1本で、初演が1974年。題名からも推察できる通り、シェイクスピアのパロディ作品。あらゆるシェイクスピア作品から、人物やら設定やら台詞やらを引っ張ってきて、日本の天保時代(江戸時代ね)の田舎町の抗争を描いてる。
 井上ひさしは、書き始める前にふたつのことを決めてたみたいなの。ひとつは、シェイクスピアの全37作品から、台詞を取り入れること。もうひとつは、シェイクスピア作品の悲劇を真似て、登場人物全員が死ぬこと。このふたつをお約束として、書いたわけ。だけど作品は全然、悲劇じゃない。悪いやつが悪いことをしてどんどん死んでいくので、全く悲しくない。むしろ痛快。
 
 このパロディ、井上ひさしの膨大な量の博識が詰め込まれた、楽しくも深い、深くも広い作品になっているので、ただ見るのも面白いんだけど、少しでも元になってるシェイクスピア作品の知識があれば、もっともっと楽しめるの。
 なので、まず登場人物が、シェイクスピア作品の中の誰をモデルにしてるのかを、ざっと挙げてみますね。たいてい、複数の人物をモデルにして、混ぜこぜにしてる。

 
佐渡の三世次(高橋一生)・・・・リチャード(「リチャード三世」)、
                
イヤーゴ(「オセロー」)、
                アントニー(「ジュリアス・シーザー」)など
きじるしの王次(浦井健治)・・・ハムレット、ロミオ
お光&おさち(唯月ふうか)・・・コーディリア(リア王の三女)、ジュリエット
                アンティフォラス双子兄弟(「間違いの喜劇」)
お冬(熊谷彩春)・・・・・・・・オフィーリア(「ハムレット」)

鰤の十兵衛(辻萬長)・・・・・・リア王
お文(樹里咲穂)・・・・・・・・ゴネリル(リア王の長女)、
                ガートルード(ハムレットの母)

蝮の九郎治(阿部裕)・・・・・・クローディアス(ハムレットの叔父)
お里(土井ケイト)・・・・・・・リーガン(リア王の次女)、マクベス夫人
尾瀬の幕兵衛(章平)・・・・・・マクベス、オセロー
清滝の老婆(梅沢昌代)・・・・・マクベスの魔女



 浦井ファンとしては、ハムレットもロミオもやってほしかった役なので、きじるしの王次は、なんと一粒で二度美味しい(みんな知ってるだろうか、この表現)役。この役を味わって見るためには、ハムレットのあらすじだけは是非とも頭に入れておきたい。(ロミジュリはみんな、知ってるでしょ?)
 王次は、やくざの親分の跡取り息子で、違う町に修行に行ってるんだけど、父親が死んだと知らされ、帰ってくる。すると、父親の弟(つまり叔父)が母親と再婚してて、親分に収まっている。王次はなんとなく、納得できなくてフラフラしてる。すると父親の幽霊が現れて「俺は殺された。仇をとってくれ」って言うの。
 ほら、完全にハムレットでしょう?
 でも、抗争相手の娘と恋に落ちるところは、ロミジュリ。そこは話がいろいろと組み合わさり、絡み合ってる。両方の話を知ってると、絡ませ方の妙が感じられて、そこもまた面白い。
 
 「ハムレット」の脚本を読むまではしなくてもいいので、あらすじと、登場人物の関係図くらいは、見ておこう!
 その2では、『天保十二年のシェイクスピア』の大雑把なあらすじをシェイクスピア作品と絡めて、説明します。

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